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「斜め45度」の視点

2022年8月9日

第405回 国交省・次世代住宅型プロジェクト、その①『スタート』

 皆さんは、国土交通省が2017年にスタートさせた、「次世代住宅型プロジェクト」という制度をご存知ですか。また。その目的を、きちんと理解していますか?

 国交省住宅局住宅生産課は、2017年(平成29年)6月16日付で、ウェブサイトに以下のような「報道発表資料」を掲載しました。

URL〈https://www.mlit.go.jp/common/001189117.pdf

[■■]平成29年度サステナブル建築物等先導事業「次世代住宅型」の提案募集の開始について
 ~先導的な技術の普及啓発に寄与するリーディングプロジェクトに対する支援~

 国交省は、2017年6月19日から7月28日まで、次世代住宅型に対する提案を募集します。

 本事業は、「IoT技術」等の活用によって、「住宅の市場価値を高める」、および「居住・生産環境の向上等に係る先導的な技術の普及啓発を図る」ため、予算の範囲内において、住宅等のリーディングプロジェクトの整備費等の一部を支援するものです------。

 ここで言う「IoT技術」とは、「インターネットに接続したり、相互に通信したりする技術」を意味しています。

(1)主な事業要件
① IoT技術を活用した住宅等であること
② 一定の省エネ性能等を満たすものであること
③ 平成29年度(2017年度)に事業着手するもの
④ 「IoT技術等を活用した次世代住宅懇談会とりまとめ」を踏まえたものであること

(2)補助対象費用
① 調査設計計画費(IoT技術等を活用した設計に係るシミュレーション費用など)
② 建設工事費(先導的なIoT技術等の導入に係る費用等)
③ マネジメントシステムの整備費用
④ 効果の検証等に要する費用

(3)補助率・補助限度額
① 補助率は「補助対象費用の50%」
③ 「共同住宅」の補助限度額は、「総事業費の5%」、または「10億円」のうち、少ない金額
④ 「戸建住宅」の補助限度額は300万円/戸

(4)応募期間
 平成29年(2017年) 6月19日(月) ~ 7月28日(金)

(5)応募方法
 応募期間内に、提案書を郵送により提出(消印有効)

(6)選定方法
 応募提案については、学識経験者等からなる「サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)評価委員会」による評価結果を踏まえ、国交省が採択事業を決定します。

(7)今後の予定
 9月上旬を目処に採択事業を公表する予定です。

 (※)事業の要件・応募方法等の詳細、提案書の様式等は、国交省のウェブサイト(下記)に掲載

URL〈http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000134.html

[■■] 「次世代住宅型プロジェクト」の概要

 次に、「次世代住宅型プロジェクト」の概要をまとめておきましょう。

【目的】
 「日本再興戦略2016」を受けて、次の基本的視点に立って、次世代住宅として備えることが期待される機能やその将来像を検討し、併せて次世代住宅の実現に向け官民が取組むべき課題の抽出等を行う。

【基本的視点】
 住宅において、消費者・生活者にとってメリットや魅力のある新たな機能やサービスが提供されるとともに、安全かつ安心して活用できるものであること。

 住宅関連事業者だけにとどまらず、医療・介護・警備・小売りなどの日常生活サービス事業者も含めた多様な業種間で、様々なものとサービスが消費者・生活者本位で結びつけられるものであること。

【委員名簿】
 住宅供給事業者等
 住生活関連サービス提供事業者
 消費者
 マスコミ関係者
 オブザーバー
 事務局

URL<https://www.mlit.go.jp/common/001285725.pdf>

【IoT技術等を活用した次世代住宅懇談会の論点とりまとめ①】

 IoT技術等を活用した住宅における新たな機能やサービスの導入を目指すにあたって、消費者・生活者の安心・安全を確保 するため、住宅供給者側、サービス事業者側それぞれが考慮すべき課題にはどのようなものがあるか。

 ◆ 情報セキュリティの確保や個人情報・プライバシーの確保の必要性
 ◆ 導入に際してのヒューマンサポート等の必要性
 ◆ 繋げる・連動させることに伴う問題
 ◆ 自動化やサービスに頼ることに対する不安(消費者アンケートにおける自由記述意見)
 ◆ その他

【IoT技術等を活用した次世代住宅懇談会の論点とりまとめ②】

 IoT技術等を導入するにあたり、その効果を最大限に発揮させる ため、住宅・住宅生産において特に配慮しておくべきことは何か。

 ◆ 住宅の造りにおける配慮事項
 ◆ 住宅の維持管理段階における配慮事項
 ◆ 住宅の生産体制における配慮事項
 ◆ その他

 住宅や住生活の質の向上の取組には、安全・安心の向上、省エネ化・省資源化、健康の増進、外部不経済の排除、利便性の向上等に資するものが想定されるが、特に国土交通省として積極的に取組み、支援すべきテーマは何か。

 ◆ 高齢者・障がい者等の自立支援【安全・安心、快適】
 ◆ 健康管理の支援【安全・安心、快適】
 ◆ 防犯対策の充実【安全・安心】
 ◆ 家事負担の軽減、時間短縮
 ◆ コミュニティの維持・形成
 ◆ 物流効率化への貢献

[■■]消費者アンケートの結果について

 年代別に見た6テーマに対する関心の高さは、以下の通りです。
❶ 健康管理(平均年齢、87.8歳)
❷ 家事負担軽減・光熱費(62.0歳)
❸ 防災・危機管理(39.4歳)
❹ 子供の見守り(35.2歳)
❺ 住宅のセキュリティ(28.9歳)
❻ 介護・高齢者見守り(23.3歳)

 次に、上記6テーマごとに、その具体的な内容を示しておきましょう。

❶健康管理
 健康上の課題対応・献立レシピの提供
 栄養に配慮したレシピによる食材の宅配
 健康上の課題対応・調理済み食品の宅配
 活動量データの記録・データ保管サービス
 体重・血圧(バイタル)データの自動測定

❷家事負担軽減・光熱費
 全自動ロボット掃除機
 ハウスクリーニング/スポット契約
 ハウスクリーニング/定期契約
 おむつの自家処理システム
 全自動洗濯もの畳み機

❸防災・危機管理
 防災情報アプリ・災害情報提供サービス
 ハザードマップ
 災害伝言板(ダイヤル)
 避難所情報などの一括情報提供
 災害時に自宅の損傷をモニタリングする

❹子供の見守り
 通話機能付き見守りカメラ
 ドア・窓のセンサー/事故防止
 ドア・窓のセンサー/防犯
 GPS機能付きキッズ用携帯
 GPS/地域住民による見守り

❺住宅のセキュリティ
 家庭用防犯カメラ
 遠隔地での鍵の閉め忘れ確認・施錠システム
 鍵の閉め忘れ通知システム
 ワンタイムの鍵の発行システム
 ドア・窓のセンサー/スマホに通知

❻介護・高齢者見守り
 ホームヘルパーによる介護サポート
 食材の宅配
 調理済み食品の宅配
 通話機能付き見守りカメラ
 生活家電の利用状況モニタリングによる異常

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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