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2017年2月28日

第240回日経新聞が「マンション市場の大きな節目」に注目

 私は日本経済新聞グループ出身のジャーナリストであり、現在も日経産業新聞に新築マンションを評価するコラムを寄稿している関係で、日経新聞には細かく目を通している。

 その日経新聞には最近、マンションに関する比較的長い記事が、よく掲載されるようになった。今年2月に掲載されたマンションがらみの記事だけでも、総数は200本に近い。その中から、主要な記事をピックアップしてみた。

 【新築マンションをテーマにした記事】

 ■販売低調でも…都心マンション「高値」の花(2月4日付け)

 新築マンションの販売が振るわない。2016年の首都圏の供給戸数は24年ぶりの低水準を記録した。

 ■マンション発売1.4%減、地方は好調目立つ(2月21日付け)

 2016年の全国マンション発売戸数は、15年比1.4%減だった。首都圏の販売が振るわなかったが、札幌や福岡など地方では、販売が好調な都市もあった。

 ■1月の首都圏マンション発売戸数7.4%減、6年ぶり低水準(2月14日付け)

 1月の首都圏の新規発売戸数は前年同月比7.4%減の1384戸だった。2カ月ぶりに前年実績を下回り、1月としては2011年(1372戸)以来6年ぶりの低水準だった。

 ■マンション発売西高東低、1月の新築戸数は近畿圏26年ぶり逆転(2月15日付け)

 マンション発売の「西高東低」が鮮明だ。1月のマンション市場動向調査によると、近畿圏の新築マンション発売戸数が首都圏を約26年ぶりに上回った。

 【中古マンションをテーマにした記事】

 ■中古マンション上昇相場に陰り、高値で売買成立しにくく(2月1日付け)

 上昇を続けてきた国内中古マンション相場に陰りが見え始めた。上昇ピッチの早さに需要が追いつかず、東京都内では値下がりに転じた地域もある。

 ■不動産各社、中古販売に注力(2月15日付け)

 首都圏の新築マンションの販売は伸び悩んでいるが、代わりに注力するのが中古マンションなどの販売。収益源を多様化して、住宅事業全体の売上高を確保する狙いだ。

 ■中古マンションの1月価格、東京都心や大阪で下落(2月22日付け)

 中古マンション価格が東京都心部や大阪市で下落した。値ごろ感のある物件を買う動きは底堅い一方、高額な物件を中心に需要が鈍い。

 【大手デベロッパーをテーマにした記事】

 ■野村不動産ホールディングス、マンション不透明(2月8日付け) 

 17年3月期はマンション販売が不透明。18年3月期もマンション減速に懸念。

 ■新築マンション発売戸数、住友不が3年連続全国一(2月8日付け)

 住友不動産が2016年の全国の新築マンション発売戸数で3年連続首位になることが8日、分かった。発売戸数は約6千戸だった模様。

 ■住友不動産、マンション堅調(2月9日付け)

 17年3月期は大型のタワーマンションの販売が堅調。営業利益は4期連続で過去最高。

 新築マンションが振るわないため、デベロッパー各社は、新築マンションと中古マンションのいわば「二股路線」へと進路を変更しつつある。日経新聞の記事が増えているのは、マンション市場がそういう大きな節目を迎えていることに、注目した結果と思われる。

 【週刊投資金融情報紙「日経ヴェリタス」の記事】

 日経本紙以外にも、ぜひ一読してもらいたいメディアがある。まず週刊投資金融情報紙「日経ヴェリタス」2月19日~25日号に掲載されたトップ記事である。刺激的なタイトル「黄昏マンション市場──富裕層も息切れ、値崩れあるか」にはじまって、次のような文章が続いている。

 建設コストや地価の高騰を背景に、既に一般のサラリーマン層には高すぎる水準に達していた首都圏のマンション価格。支えになっていた相続対策や投資を目的とした富裕層の需要も、ここに来て息切れ気味だ。だが価格破壊者の不在や異常な低金利は、「売れ行きは悪いが価格は下がらない」という、ゆがんだ均衡をもたらしている。それが崩れる兆候はあるのか──。

 【ウェブサイト「日経BizGate」のコラム】

 次に、みずほ証券上級研究員の石澤卓志氏が、ウェブサイト「日経BizGate」に寄稿した、「マンション市場が示すストック経済への道」である。

 コラムのURL<http://bizgate.nikkei.co.jp/article/126841214.html>

 石澤氏は、「2016年に東京圏で供給された新築マンションは、中古マンションの成約件数を下回った。また、東京23区についても、新築マンションの供給戸数は、中古マンションの成約件数を下回った。新築と中古の逆転は、不動産関係者にとって衝撃的な出来事といえる」と指摘。その上で、図表「マンション供給戸数等の推移」を添付している。

 この図表は、マンション市場が大きな節目を迎えていることを明確に示した、まさに衝撃的な図になっている。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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