リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2017年7月25日

第254回野村不動産「ホログラフィック・マンションビューアー」の威力

 デベロッパーが行う記者発表のテーマ、あるいは報道関係者に送付するニュースリリースのテーマが、各社間でときどき重複することがある。

 大きな地震が発生すれば「防災対策の見直し」、新学期を迎える時期が近づくと「認可保育園の充実」、クロネコヤマトなど宅配業者の人手不足が伝えられる昨今は「宅配ボックスの改良」という具合である。

 今年の4月~6月には、どういうワケかCG(コンピュータ・グラフィックス)やVR(バーチャル・リアリティ)技術の活用をテーマにしたものが多かった。

 三井不動産レジデンシャル──

 「パークタワー晴海」を360度シアターで体感

  CGとアニメーションによる新感覚モデルルームのご案内

  野村不動産──

 「ホログラフィック・マンションビューアー」を共同開発

 「プラウドシティ越中島」の販売に初採用

 三菱地所──

  VR技術を活用した「没入体験型」営業ツールを導入

  三菱地所グループ4社で住宅事業のVR化をカバー

 大京──

 「ライオンズ札幌中央レガシア」に最新ラウンジオープン

  VR技術を導入した物件案内で完成前の建物を疑似体験

 この中で、今回は野村不動産が共同開発した、新築マンション販売を後押しする新製品、「ホログラフィック・マンションビューアー」について説明する。

 日本マイクロソフトが2017年1月から提供を開始した、ヘッドマウント型のホログラフィックコンピューターに、「HoloLens(ホロレンズ)」という製品がある。

 (1)HoloLens。これを頭に装着する。

 (2)HoloLensで見える風景。目の前の「現実世界」の中に、3Dの仮想物体である「ホログラフィック」が重ねて表示される。

 目の前の「現実世界」とは、マンション建設現場外側の仮囲い、工事用のタワークレーン、周辺を走る道路、近隣に立つ建物などを意味する。これに対して「ホログラフィック」とは、3次元のマンション完成模型の映像(3Dの仮想物体)を意味する。

 従来のVR(バーチャル・リアリティ)デバイスとは異なり、現実世界が見えている状態のまま、完成模型を表示できるため、その場の現実空間と関連付けることができるのである。

 さらに補足すると、今回開発した「ホログラフィック・マンションビューアー」には、「リアルサイトビューアー」「ホログラフィック外観ビューアー」の2つの機能が備わっている。

 (3)リアルサイトビューアー

 HoloLens越しにマンション建設予定の敷地を眺めると、建物の完成イメージを原寸大で確認することができる。

 私は分譲マンションを取材する際には、必ず現地を訪れて、敷地を色々な角度から眺める。その際、このHoloLensがあれば、「ずいぶん分かりやすいだろうな」と感じた。

 (4)ホログラフィック外観ビューアー

 ホログラフィック外観ビューアーとは、マンションの外観模型をHoloLens越しに表示するビューアーをいう。HoloLensを使えば、どのような場所であっても、マンションの外観模型のイメージを、360度すべての方向から確認できる。

 この写真では、台の上に載せた模型をHoloLensで見ているように感じる。しかし、実際には台の上に模型がなくても、HoloLensを装着していれば、外観模型をいろいろな方向から確認できるのである。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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