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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2011年6月7日

第33回センチュリーフォレストをトップ物件と「予感」した理由

 私は日経産業新聞に「目利きが斬る」というコラムを持っている。毎月1回、話題の住宅物件を取り上げて、評価し、かつ点数も付ける。

 少し古い話だが、2月22日付の紙面では、渋谷駅から徒歩7分、代官山駅から徒歩8分の場所に建設中の分譲マンション、「センチュリーフォレスト」を取り上げた。

 以下のような特徴を持つ物件だった。

 (1) 旧公団うぐいす住宅(敷地1.1ha、5棟、148戸)を建て替え。

 (2) 建物は実質7層で、免震構造。

 (3) 総戸数は244戸(123戸が事業協力者住戸、121戸が分譲住戸)

 (4) 建物の設計・施工、売主が鹿島で、管理を鹿島建物総合管理が行う、いわゆる「オール鹿島ブランド」物件。

 「目利きが斬る」のコラム末尾は、次のような文章で結んだ。

 構造面の特徴は、建物に加わる地震動を受け流し、揺れを低減する免震構造になっていること。「阪神大震災による建物被害が、建て替えの要因になった経緯を尊重しました」(鹿島事業部の重松諭次長)。

 「オール鹿島ブランド」物件は、数年に1度くらいの頻度で、首都圏トップ物件の座を獲得してきた。この「センチュリーフォレスト」も、トップ物件の座を予感させる出来映えだ・・・。

 普通は、2月22日付紙面の段階で、「この物件がトップの座を占める」というような書き方はしない。誰でも、すぐに分かることだが、夏になり、秋になり、冬になったら、「さらに優れた物件」が販売される可能性を否定できないからだ。

 それを、私は、なぜ、先のことも考えないで、「トップ物件の座を予感させる出来映え」と断言してしまったのか。今、振り返ると、やはり、「虫の知らせ」と説明するしかない。虫の知らせとは、「よくないことが起こりそうな気がすること。悪い予感」という意味だ。

 虫の知らせ通りに、3月11日、東日本大震災という、深刻で苦痛に満ちた事態に見舞われた。その結果、分譲マンションに関しては、「都心、高台、中低層、免震構造」が理想とされ、さらに自家発電装置があれば「鬼に金棒」とされるようになった。

 このうち、センチュリーフォレストには、「都心、高台、中低層、免震構造」の4条件が揃っている。今後、自家発電装置を持つマンションが建設されるようになるまでは、間違いなくトップ物件の座を占め続けるであろう。通常時であれば、予感が当たったことを誇ってもいいのだが、さすがに今回だけは、そういう気持ちにはならない。

 今年1月下旬から始まった、センチュリーフォレストの第1期販売は、好調に推移。大震災の影響で遅れていた第2期販売は、6月中旬に始まる。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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