リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2015年1月27日

第164回日本マンション学会の雰囲気

 毎年、出身校や所属する団体などから、各種の名簿が送られてくる。日本マンション学会からは、「2012年6月?2014年10月までに、新たに会員になった方」の名簿が送られてきた。ただ、新会員を数えると72名だったので、少し寂しい。

 筆者は約十年前に、マンション学会に入会した。

 入会以前は、「マンション学会には、分譲マンションを供給するマンションデベロッパーや販売会社の企画担当者、設計事務所や建設会社のマンション部門スタッフなど、マンションビジネスの担い手たちも多く参加しているだろう」と予想した。しかし、実際に入会してみると、大半を占めるのは、大学の教員、弁護士、マンション管理士などであることが分かった。

 マンション学会の雰囲気を伝えるために、設置されている研究委員会の名前を紹介する。

 一、マンション解消制度特別研究委員会 

 二、マンション判例研究委員会 

 三、マンション再生技術研究委員会 

 四、マンション住環境まちづくり研究委員会 

 五、マンション行政課題研究委員会 

 六、マンションストック活用研究委員会 

 七、定期借地権マンション研究委員会

 名前を見て分かるように、「すでに供給されてストックとなったマンションを取り巻く問題」を研究する委員会だけである。

 会員には年に3回、機関誌「マンション学」が送られてくる。最近の3冊は次のような内容だった。

 2014年11月号

  特集「耐震改修の現状と課題」

 2014年4月号

 特集「仙台大会」

 メインシンポジウム マンションは住環境をどう変えたか

 第1分科会 最近のマンション紛争と裁判

 第2分科会 マンションを費用負担から考察する

 第3分科会 マンション再生とリモデリング

 第4分科会 都道府県の防災対策と各市におけるマンションの地震対策

 第5分科会 改正被災マンション法をめぐる諸問題について

 第6分科会 一般報告

 2013年12月号

  特集1「あらためてコミュニティの意義を考える」

  特集2「台湾と日本のマンション法制と管理実務」

 学会だから堅いテーマになることは当然なのだが、新たに供給されるマンションの動向をビビッドに研究したテーマが見当たらないのは、少し物足りない感じもする。

 しかし、頭を冷やして考えると、新たに供給されるマンションの動向に関しては、不動産経済研究所の「マンション市場動向」、東京カンテイの「Kantei eye」などを読めば、ある意味では情報は事足りている。

 マンション学会が地道に取り組んでくれるからこそ、マンションの居住者、管理組合、管理会社たちが直面する難しい問題を解く手がかりがが、少しずつ得られていくのであろう。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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