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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2013年6月11日

第105回東日本大震災の2倍を超える長周期地震動(南海トラフ巨大地震に伴う被害想定1)

 南海トラフを震源とするマグニチュード9クラスの巨大地震が起きた場合の被害想定を、東京都防災会議が5月に公表した。

 このうち、最も警戒しなければならないのは、超高層ビルが長周期地震動で揺れた場合である。仮に、東海・東南海・南海地震という3連動地震が発生した場合、東京に建つ周期2─6秒の超高層ビルの揺れは、東日本大震災の2倍以上の大きさになり、かつ継続時間も10分以上と考えられている。

 ただし、長周期地震動を受けても、超高層ビルの床が落ちたり、建物が倒壊するような事態は発生しないと予想される。しかし、建物の安全確認、継続使用の判断に時間を要する場合もあると考えられている。

 【耐震構造の超高層ビル】

 耐震構造の超高層ビルは、地震動の卓越周期と建物の固有周期が一致した場合、揺れ幅や継続時間が著しく大きくなるケースがある。このとき、超高層ビルの揺れは、地震動のレベル、周期特性、建物の立地、構造、高さなどの条件によって異なる。したがって、各ビルごとに、検証する必要がある。

 【制震構造の超高層ビル】

 制震構造は耐震構造より揺れは少ない。ただし、東日本大震災では、オイルダンパー(制震装置)が損傷したり、減衰効果が予想より少なかったケースも報告された。このため、長周期地震動に対してビルごとに検証しておく必要性がある。

 【免震構造の超高層ビル】

 免震構造は耐震構造より揺れは少ない。ただし、東日本大震災では、免震装置によって長周期化した建物の固有周期と、長周期地震動の卓越周期が一致して、エキスパンションジョイントが損傷した事例があった。このため、免震層の変位量がクリアランス(許容変位量)に収まるかどうか、ビルごとに検証する必要がある。

 参考までに、都内に立地する高さ60mを超える建築物1053件の概要データを掲載する(東京都防災ホームページ「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定」から抽出)。





細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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