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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2014年1月14日

第127回主張するゼネコン2「異例のトップ会談」

 建築費は底値だった2011年春と比べて、すでに20%程度上昇。それに加えて、2020年東京オリンピック招致が決まったため、建築費はさらに上昇する気配を見せている。

 昨年11月には、日本建設業連合会の中村満義会長(鹿島社長)と不動産協会の木村恵司理事長(三菱地所会長)が、建設現場で働く職人の労務費をめぐって意見交換した。「中村会長は人手不足の解消へ職人の賃上げが不可欠と強調し、発注価格の引き上げを求めた。木村理事長は、安定的な発注を図る意向を示す一方、賃金抑制の一因である建設業界の重層的な下請け構造の解消に努めるよう求めた」(時事通信)。

 筆者はこの道30年以上になるが、日本建設業連合会と不動産協会のトップ同士が、建築費について意見を交わしたというケースは記憶にない。

 ここで、東京カンテイが作成したデータ2点を見る。まず、2000年~2012年に竣工した「20階以上のタワーマンションの施工実績ランキング」。上位にはスーパーゼネコンが並ぶ。


 次に「免震・制震マンションの施工実績ランキング」。こちらも、やはり上位にはスーパーゼネコンが並ぶ。


 施工実績ランキングの上位を占めたスーパーゼネコンは、前回伝えた「主張するゼネコン1─変化した力関係」で主役を務めた。影響力の強いスーパーゼネコンが、公共工事だけではなく民間のマンション工事でも強腰に出たら、マンション価格は一気に上昇しかねない。

 振り返ると、建築費や土地代が上昇する時期にマンション各社が採用してきたのは、仕様・設備のグレードを落とす、専有面積を減らす、共用部を減らすなど、「居住性能の下方修正」だった。しかし、そのような小手先の対策を繰り返すだけでは、未来は開けない。

 今課題になっているのは、工事現場の人手を減らすシステム化工法に対応できる、新たなマンション計画。換言すると、施工を視野に入れた建築計画、構造計画、設備計画に注力する必要がある。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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