リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2016年7月19日

第218回「プラウド京都白川通」と五山の送り火

 野村不動産は2014年11月に中京区で、京都初のプラウドとなる「プラウド京都麩屋町御池」を販売し、平均坪単価370万円という関西圏最高水準を記録した。2棟目が中京区の「プラウド京都東洞院」で既に完売し、3棟目が上京区の「プラウド京都御所東」で現在も販売中。

 続く4棟目は左京区一乗寺谷田町の「プラウド京都白川通」で2016年7月中旬から販売を開始した。野村不動産としては、初めて上京区・中京区・下京区という都心を離れたことになる。

 その取材のためプラウド京都白川通のモデルルームを訪ねると、野村不動産関西支社で企画を担当した推進課の橘田宗勝課長および伊賀哲平氏、販売を担当する住宅営業二課の岩田智行氏が対応してくれたのに加えて、野村不動産ホールディングス広報課の小沼雄二郎課長代理が東京から駆けつけてくれた。

 エントランスホールの完成予想写真

 取材時間は1時間30分の予定で、「企画担当者は忙しいので最初の30分だけ」という話だった。そのため、橘田氏と伊賀氏に手短に話を聞こうとすると、橘田氏は「時間を確保できたので大丈夫です」と前置きして丁寧に説明してくれた。

 設計のテーマとしては、大きく「景観を楽しむと同時に、建物自体を景観に溶け込ませる」、「環境と健康を重視するロハス・コンセプト」という2点があったという。

 まず感心したのは「景観を楽しむための工夫」である。これまで景観を絵として切り取る「額縁ウィンドウ」は知っていたが、今回は「額縁ウィンドウ」のガラスを、「十の字」型のサッシで4分割して、額縁を4つ用意するという芸が細かい工夫を加えていた。

 また、室内とベランダの間に「パノラマビューウィンドウ」を設けたのだが、これは「一の字」型ではなく、「一の字」を三辺に折り曲げたような形になっている。そのためガラスが三分割されて景観が何か立体的に見える感じがする。

 次にロハス・コンセプトのために、各階中央部を「十の字」型に走る共用廊下を、内廊下ではなくあえて外廊下とすることで、各戸に風が入るように配慮した。

 実はこれらは単なる手始めで、私がこれまで見たことがないような、ユニークなディテールが山盛りだった。

 細野「こういったディテールは、設計を担当したアクセス都市設計が提案したものですか」

 橘田「主として野村不動産が提案して、アクセス都市設計に検討してもらいました」

 私はいろいろなマンションを取材してきたが、デベロッパーの立場から建築のディテールについて、橘田氏のように詳しくかつ楽しそうに話す担当者に会ったことはない。同業他社の人たちもぜひモデルルームを訪ねて、自分の目で確認して、仕事の参考にしてほしい。

 その席で見せてもらったのが、「プラウド京都白川通」画完成したとき、屋上から見えるはずの「五山送り火」の写真である。

 「舟形」の送り火

 細野「さっき現地に行ってきましたが、まだ基礎工事の段階でした。この写真はどうやって撮ったのですか」

 橘田「クレーンに乗って撮影しました」

 こういう話を聞くと、京都の人が五山送り火を、いかに大切にしているかが伝わってくる。

 販売担当の岩田氏は、プラウド京都麩屋町御池に次いで、京都で手がける2件目の物件になるという。「京都では上京区・中京区・下京区には供給物件が極めて多いが、都心を離れると物件数は一気に少なくなります。希少価値のある物件なので丁寧に販売していきたい」と話す。

 このリアナビの「不動産市況」で京都を調べると、確かに都心には販売中の物件が密集しているのに、都心を離れるとまばらになるのが一目瞭然である。

 

 【プラウド京都白川通】

所在地──京都府京都市左京区一乗寺谷田町35番

交通──叡山本線「一乗寺」駅徒歩7分

    一乗寺下り松町バス停より徒歩3分

構造・規模──鉄筋コンクリート地上5階

総戸数──44戸

専有面積──61.70~110.87平方メートル

平均坪単価──250万~260万円(予定)

建物竣工時期──2017年2月下旬

売主──野村不動産、新都市企画

施工──大末建設大阪本店

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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