リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2013年4月23日

第101回「ブリリアタワー池袋」─3  待ち時間平等のエレベーター運行システム

 東京建物と首都圏不燃建築公社が販売する、地上49階、高さ189m、総戸数432戸(分譲322戸)の「ブリリアタワー池袋」は、「東京都タワーマンション高さランキング」では6位にランクされる。

 1位 THE TOKYO TOWERS─MID TOWER   

   193.5m、58階建 

 1位 THE TOKYO TOWERS─SEA TOWER   

193.5m、58階建

 3位 勝どきビュータワー        

  193.0m、55階建 

 4位 アクティ汐留 (ラ・トゥール汐留 ) 

190.2m、56階建 

 5位 アウルタワー  

189.2m、52階建 

 6位 ブリリアタワー池袋

    約189m、49階建

 タワーマンションではエレベーターの運行が重要な課題になる。「ブリリアタワー池袋」の場合には、待ち時間を平等にするシステムが採用された。

 建物の下層階(1─10階)には、豊島区新庁舎「としまエコミューゼタウン」などがあり、マンションはその上部(11─49階)にある。そのため、エレベーターは、次のような構成になる。

 建物の1階北側─マンション専用のエントランス

  3台のシャトルエレベーターにより、1─11階を移動

 建物の11階─マンション専用階のエントランス

  中層住戸用(12─31階)のエレベーター2台

   11─31階に各階停止

   分速150m、各11人乗り

  高層住戸用(32─49階)のエレベーター2台

   11階および31─49階に各階停止(12─30階は通過)

分速240m、各11人乗り

 中層住戸用が分速150m、高層住戸用が分速240mと、スピードが違うことに注目したい。エレベーターの運行システムを分かりやすく示すため、図1を描いた。


 図1を見て、「なぜ、中層住戸用2台、高層住戸用2台に分けたのだろう。わさわざ分けないで、4 台を一括して、"待ち時間最短モード"で運転した方がいいのではないか」と疑問を持った人もいるのではないだろうか。

 この疑問を図に描いてみた。


 図1と図2を比べる。図1の場合には、中層住戸の住人と高層住戸の住人が、エレベーターを待つ時間は、ほぼ同じになる。

 しかし、図2の場合には、中層住戸の住人の待ち時間は、高層住戸の住人と比べて、約半分で済む。要するに、「中層が有利、高層が不利」の不平等なシステムなのである。

 インターネットの掲示板「マンションコミュニティ」などを見ると、高層階の住人が、「私たちだけが待ち時間が長すぎる」として、下層階や中層階の住人に対し、いらいら感をつのらせている様子が伝わってくる。ブリリアタワー池袋のエレベーター運行システムは、そういった事情を背景にして生まれた。

 ちなみに、完成すると日本一の超高層ビルになるハルカス(高さ約300m、60階建、駅・百貨店・オフィス・ホテル・美術館・展望台、大阪市阿倍野区)の場合には、タワー館だけでエレベーターの数が50台を超えている。このため、地上1階→ロビー階と、ブリリアタワー池袋と同じような構成になる。

 ただし、ロビー階が、16階(美術館と展望台)、17階(オフィス)、19階(ホテル)と、用途ごとに分かれているため、その構成ははるかに複雑である。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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