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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2012年11月13日

第85回「グランスイート」騰落率ナンバーワンの秘訣

 不動産マーケティングの「アトラクターズ・ラボ」は、年に何回か、分譲マンションをテーマとした、興味深い会社別ランキングを発表する。例えば、次のようなランキングがある。

 (1) 売主別中古マンション騰落率ランキング

 (2) 売主別アフターサービス満足度ランキング

 (3) 管理会社についての評価ランキング

 (4) 施工会社についての評価ランキング

 (5) ブランド別マンション評価ランキング

 分譲マンションに関するランキングは多々あるが、会社別のランキングは少ないので貴重である。

 この中で、面白いけれど、少し分かりにくいのが、売主別中古マンション騰落率ランキングだ。2011年版の「売主別中古マンション騰落率ランキング」は、9月12日に公表された。これは、2001年以降に分譲されたマンションを対象にして、「新築時の住戸価格」と「2011年に売り出された住戸の現在価格(中古価格)」を突き合わせて、新築時からの騰落率を算出して、売主別に集計したもの。結果は以下になった。

 1位─丸紅(平均専有面積64.1㎡、平均騰落率プラス1.8%)

 2位─野村不動産(面積78.4㎡、騰落率マイナス1.5%)

 3位─東急不動産(面積63.9㎡、騰落率マイナス1.5%)

 このように、丸紅だけが、新築時価格に比べて、現在価格(中古価格)が上昇している。

 また、「単独売主」+「JV幹事会社売主」を合算したランキングもある。

 1位─丸紅(平均専有面積65.4㎡、平均騰落率プラス2.6%)

 2位─伊藤忠都市開発(面積71.5㎡、騰落率プラス1.0%)

 3位─三井不動産レジデンシャル(面積77.7㎡、騰落率マイナス0.4%)

 ここでも、丸紅が1位になっている。

 ランキングで1位になった丸紅に関してのみ、騰落率がプラスになった17物件の詳細なデータが掲載されている。それを一覧すると、コンパクトマンション(30~50㎡)より広い「ゆとりコンパクト」、および「都心・準都心」がキーワードになっていることが分かる。

 丸紅は2010年版でも1位だったので、2年連続でナンバーワンということになる。同社の分譲マンションのブランド名は「グランスイート」。各物件のホームページには、「中古マンション価格上昇率(新築時対比)で、2年連続1位になりました」と明示している。

 その秘訣は何か。「丸紅は2000年代の初めから、他社に先駆けて、都心・準都心の立地がいい場所に"ゆとりコンパクト"を供給してきた。ここ数年、分譲マンションの顧客が都心・準都心に回帰して、販売価格が上昇してきたことが、今回の結果につながったと受け止めている」(同社首都圏マンション事業室開発第二チーム長の馬躰純一氏)。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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