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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2017年12月5日

第267回三井不動産レジデンシャルに勢い、分譲マンションの取材機会を月に3回

 大手デベロッパー各社が、分譲マンションの取材機会を設けるのは、平均すると年に数回程度に過ぎない。しかし三井不動産レジデンシャルは、今年11月後半に、取材機会を実に3回も設けた。

 次のような具合である。

 [ 11月16日(木)に実施 ] ★★印 

 「ザ・タワー横浜北仲」(58階建、総戸数1176戸)

  第1期販売の事業説明会およびモデルルーム見学会 

 [ 11月20日(月)に実施 ] ★印

 「パークシティ武蔵小山 ザ タワー」(41階建、総戸数628戸) 

  モデルルーム見学会 

 [ 11月27日(月)に実施 ] ★印

 「パークシティ中央湊 ザ タワー」(36階建、総戸数416戸)

  竣工フプレス見学会 

 「ザ・タワー横浜北仲」「パークシティ武蔵小山 ザ タワー」「パークシティ中央湊 ザ タワー」はいずれも、三井不レジの勢いを感じさせる話題の大型物件である。また同社が取材の機会を何回も設けるのは、企業として勢いがあるためである。

 それゆえに、記事のタイトルを、「三井不レジに勢い」とした。

 さて、「ザ・タワー横浜北仲」に★★印、「パークシティ武蔵小山 ザ タワー」と「パークシティ中央湊 ザ タワー」に★印を付けたが、その意味がお分かりだろうか。

 三井不レジから「取材のご案内」が届いたとき、参加を希望する場合には、FAXで参加申込書を返信する仕組みになっている。ただし返信先のFAX番号は「三井不動産広報部」(★★印)、あるいは同社から業務を委託された広告会社の「プラップジャパン」(★印)の2種類に分かれている。

 私としては、「三井不動産広報部が直に仕切るのならニュース価値が高い」と判断して、可能な限り参加するようにしている。一方、「プラップジャパンが仕切るのならニュース価値は普通レベル」と判断して、時間が空いていれば参加する。

 今回、少し不思議に思ったのは、「ザ・タワー横浜北仲」が★★印で、「パークシティ武蔵小山 ザ タワー」が★印だったことだ。

 2つの物件は、ともに首都圏この秋の話題物件とされ、第1期販売もともに11月下旬に始まった。それなのになぜ、★★印と★印に分かれたのだろう。

 「ザ・タワー横浜北仲」(総戸数1176戸)は、第1期で実に横浜市で過去最大という730戸(総戸数の62%)を販売する。これは想定購入者からの反応が極めて良かったためと思われる。

 一方、「パークシティ武蔵小山 ザ タワー」(総戸数628戸、販売総戸数491戸)では、第1期の販売戸数は204戸(総戸数の約42%)となっている。これは横浜北仲の62%と比べれば少し少ないが、最近の23区物件の中では立派な数字である。

 もう1点、モデルルームの累計来場者と平均坪単価を比較してみよう。

 「ザ・タワー横浜北仲」

  累計来場者─3600組

  平均坪単価―約390万円(第1期)

 「パークシティ武蔵小山 ザ タワー」

  累計来場者─1700組

  平均坪単価─約470万円(第1期)

 平均坪単価を見ると、むしろ武蔵小山の方が高いのが分かる。すなわち、横浜北仲が★★印で、武蔵小山が★印に分かれる理由が見当たらないのである。

 それでは、報道関係者はどのように行動したのだろう。★★印の「ザ・タワー横浜北仲」の記者発表には20人超が参加し、質疑応答も活発だった(下図は完成予想図)。

 一方、★印の「パークシティ武蔵小山 ザ タワー」の記者発表には、何人が参加したのかよく分からない。それは、10時~14時までなら「いつでも可」という自由見学制になっていて、全体像を把握できなかったからだ。ただし、私が参加した10時コースには計4名の報道関係者が顔を見せていたので、合計すれば20人を超えたと思われる。

 またモデルルームには、女性の接客要員だけではなく、三井不動産の広報担当者や、三井不動産レジデンシャルの販売スタッフが詰めていて、質問すれば何でも答えてくれた(下図は完成予想図)。

 それに加えて、モデルルームから帰るときには、珍しいお土産までもらった。立派な箱に入っていたので、和菓子あるいは洋菓子と思ったのだが、事務所に帰ってから開けてみると中身はなんと「8インチタブレット型PC」だった。なぜ、こんな変わった品物をくれたのだろう?

 ということで、武蔵小山が★印だった理由がよく分からなかったのに加えて、さらに「タブレット型PCの謎」まで増えてしまった。

 最後に3つの分譲マンションの名前を、じっくり見比べてもらいたい。

 「ザ・タワー横浜北仲」

 「パークシティ武蔵小山 ザ タワー」

 「パークシティ中央湊 ザ タワー」 

 なぜ、「パークシティ横浜北仲 ザ タワー」では、なかったのだろう。

 なぜ、「ザ タワー横浜北仲」では、なかったのだろう。

 なぜ、「ザ・タワー横浜北仲」に決まったのだろう。

 11月に3回も取材の機会を設けてもらったため、「ザ・タワー横浜北仲」というネーミングについても、ついアレコレ考えてしまうのである。

 読者の声「そういうことは、取材したとき、聞けばよかったのでは?」

 私の返事「横浜北仲の取材では、ネーミングについては思いつきませんでした」

 横浜北仲での取材不足を補うため、武蔵小山のモデルルームで、ネーミングについて質問してみた。すると次のような趣旨の答が返ってきた。

 ──原則として、物件の名前は物件の担当者が決定します。横浜北仲は三井不動産レジデンシャルと丸紅の共同事業です。一般的には、三井の「パークシティ」が有力な候補になるのは確かですが、丸紅には「グランスイート」というブランド名があります。それを考慮して、「ザ タワー横浜北仲」という案が生まれたのかもしれません。

 いずれにしても、なぜ「ザ・タワー横浜北仲」になったのかは、横浜の担当者に聞いてもらわなければ分かりません──。

 ということで、ネーミングの謎は、依然として解けないままになっている。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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