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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2015年5月7日

第173回リセールバリューに関する「難問」

 東京カンテイがマンションの「リセールバリュー(再販価値)」についてデータを公表し始めたのは1999年からという。

 リセールバリューとは、マンションを購入した当時の新築価格と、現時点の中古価格を比較した指標。数式で書くと以下になる。

 〇リセールバリュー=中古価格÷新築価格

 例えば、10年前に分譲されたときの新築価格が5000万円で、現在の中古価格が5500万円とする。

 〇リセールバリュー=5500万円÷5000万円=1.10

 このようにリセールバリューは1.10倍、110%、プラス10%などとなる。

 東京カンテイが2014年10月に公表した図「都心6区 築10年中古マンションのリセールバリュー推移」を転載する。

 例えば、図の2014年の個所を見ると、リセールバリューは108.5となっている。これは、2004年に販売された新築マンションの新築価格と、それから10年後の2014年に転売された中古価格とを比較した数値である。

 2014年の中古価格÷2004年の分譲価格=108.5

 最近、リセールバリューに関する記事を書いていて、担当編集者との間で分譲時期と竣工時期の定義が話題になり、担当者が次のようなケースを例に挙げて質問を口にした。

 〇2004年1月に着工。

 〇2004年3月~2005年7月に分譲。

 〇2005年8月に竣工。

 「このように2年間にまたがって分譲(販売)している物件の場合には、それを考慮して、データ化しているのですか?」

 そういう話なら、極めて複雑な例がある。住友不動産が分譲した大規模超高層マンション、「ワールドシティタワーズ」(全2090戸)である。

 〇2004年に着工。

 〇2004年に分譲開始。

 〇2007年に竣工。

 〇2012年に分譲終了。

 少し考えただけでも、頭がクラクラしてくる。

 そして最後のとどめは新築、新古、中古の定義である。

 〇新築 ──竣工して1年未満で、かつ未入居物件(法律「住宅の品質確保の促進等に関する法律」第2条2項)

 〇新古 ──竣工から1年以上で、かつ未入居物件

 〇中古その1──竣工して1年以上、または入居済み物件(不動産業界の自主基準「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」第3条10)

 〇中古その2──借入申込日が竣工から2年以上、または既に人が住んだことがある物件(「住宅金融支援機構」のマンション購入融資説明書)

 この定義によれば、「ワールドシティタワーズ」で2008年~2012年に分譲された物件は、新古物件であり、かつ中古物件ということになる。こういう「難問」を、東京カンテイはどのようにデータ化したのだろう。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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