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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2021年6月22日

第378回 三菱地所グループが「不動産売買におよぼすコロナの影響」を調査

 三菱地所リアルエステートサービス(略称・三菱地所リアル)は、主として法人を対象に、「不動産の売買仲介、鑑定、管理、運営、コンサルティング」などの業務を行う会社です。

 同社は2020年7月17日に、新型コロナウイルス感染症の不動産売買における影響を調べるために行った、「第1回アンケート調査(回答数730件)」の結果を公表しました。

 そして、2020年11月11日に「第2回アンケート調査(回答数674件)」の結果、2021年3月29 日に「第3回アンケート調査(回答数528件)」の結果を公表しました。

 調査結果の公表は、約4ヵ月に1回のペースということになります。

 第1回調査の結果
  URL<https://www.mecyes.co.jp/resource/141b0bd07e8e8863f2e90b7450334006.pdf>

 第2回調査の結果
  URL<https://www.mecyes.co.jp/resource/1477abe2855fcbc5409d69b3c3130b37-1.pdf>

 第3回調査の結果
  URL<https://www.mecyes.co.jp/resource/78f4e487dbdd3e71a2472b429967e2ed.pdf>

【■■】第1回調査結果(2020年7月17日公表)の内容

 この調査結果の内容を、私がQ&A方式にまとめてみました。

 ◆質問1──新型コロナウイルスの発生により、「不動産の購入に対するスケジュールや意思決定」に、どのような影響がありましたか。

 思い起こすと、2020年の4月から5月までは、首都圏などを中心に、緊急事態宣言が発令されていた時期でしたので、その影響を見極めようとするために行った調査と思われます。

 ◇総回答数──367件
 ⓐ「購入物件探索のスケジュールが遅れている・スケジュールを延期した」
   180件(49%)
 ⓑ「購入計画が保留・中止となった」
   85件(23%)
 ⓒ「影響はまったくない」
   102件(23%)

 「スケジュールの遅れ・延期」が49%、「購入計画の保留・中止」が23%、合計すると72%と、実に厳しい結果になっています。

 ◆質問2──不動産の購入について新型コロナウイルスの発生により、買主の立場として売主側の売却希望価格にどのような影響がありましたか。

 ◇総回答数──339件
 ⓐ「新型コロナウイルス発生前より売買希望価格を著しく値下げする打診が増えた」58件(17%)
 ⓑ「新型コロナウイルス発生前よりも低い売買希望価格での打診が増えた」154件(45%)
 ⓒ「影響はまったくない」回答数127件(38%)

 「売買希望価格を著しく値下げ」が17%、「購入計画の保留・中止」が45%、合計すると62%と、こちらもまた厳しい結果になっています。

 ◆質問3──事業環境悪化により、不動産の売却による資金調達を行うお考えはありますか。

 ◇総回答数──604件
 ⓐ「考えていない」245件(40%)
 ⓑ「現在、不動産売却の予定・計画はない」143件(24%)
 ⓒ「ありえる」124件(21%)
 ⓓ「分からない」92件(15%)

 「考えていない」が40%、「現在、不動産売却の予定・計画はない」が24%、合計すると64%と厳しい結果ですね。

【■■】第2回調査結果(2020年11月11日公表)の内容

 ◆質問1──2019 年度と比べて 2020 年度の事業環境の見通しをどのように予想していますか。

 ◇総回答数──674件
 ⓐ「悪くなる」
   486件(72%)
 ⓑ「前年済み」
   123件(18%)
 ⓒ「良くなる」
   37件(6%)
 ⓓ「分からない」
   28件(4%)

 ◆質問2──不動産の売却を検討・実施したアセット種別を教えてください。

 ◇総回答数──298件
 「土地」128件(43%)
 「一棟マンション」62件(21%)
 「オフィスビル」33件(11%)
 「商業施設」25件(8%)
 「ホテル」14件(5%)
  以下省略

 ◆質問3──不動産の売却についてコロナ禍の長期化により、スケジュール・意思決定にどのような影響がありましたか。

 ◇総回答数──604件
 ⓐ「遅延している」128件(39%)
 ⓑ「影響なし」123件(38%)
 ⓒ「保留・中止した」39件(12%)
 ⓓ「買主都合による契約キャンセル」35件(11%)

 ⓐ「遅延している」、ⓒ「保留・中止した」、ⓓ「買主都合による契約キャンセル」を合計すると、62%になります。これは随分、厳しい結果ですね。

【■■】第3回調査結果(2021年3月29日公表)の内容

 ◆ニュースリリースのタイトル  第3回新型コロナウイルス感染症の不動産売買における影響を調査  スケジュール・意思決定への影響で、売却購入共に約55%が「影響なし」と回答

 ◆質問1──2019 年度と比べて、 2020 年度(2020年4月1日~2021年3月31日)の事業環境の見通しを、どのように予想していますか。

 ◇総回答数──528件
 ⓐ「悪くなる」
   322件(61%)
 ⓑ「前年並み」
   147件(28%)
 ⓒ「良くなる」
   34件(34%)
 ⓓ「分からない」
   25件(5%)

 第1回調査の「悪くなる81%」、第2回調査の「悪くなる72%」と比べて、第3回調査は「悪くなる61%」という数字です。事業環境は少しずつではあるが、着実に好転しています。

 ◆質問2──売却希望価格に影響が出ていない不動産の種別を教えてください。
  1位「一棟マンション・アパート」、2位「オフィスビル」、3位「物流施設」、4位「商業施設」、5位「ホテル」という順番です。

 ◆質問3──購入希望価格に影響が出ていない不動産の種別を教えてください
  1位「一棟マンション・アパート」、2位「オフィスビル」、3位「物流施設」、4位「商業施設」、5位「ヘルスケア施設」という順番です。

 このように、「売却希望価格に影響が出ていない不動産の種別」と「購入希望価格に影響が出ていない不動産の種別」は、ほぼ一致していることに注目してください。

各位

2021 年 3 月 29 日 三菱地所リアルエステートサービス株式会社
不動産取引に関する独自アンケートを実施 第3回新型コロナウイルス感染症の不動産売買における影響を調査 ~スケジュール・意思決定への影響で、売却購入共に約55%が「影響なし」と回答
三菱地所リアルエステートサービス株式会社(本社:東京都千代田区大手町 1-9-2、代表取締役社⻑:湯浅 哲生)は、当社顧客を対象に、不動産売買における新型コロナウイルス感染症の影響について第3回アンケート調査を 実施いたしました。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、目まぐるしく状況が変化し続ける中、多くの企業活動に影響が出ていることか ら、新型コロナウイルスによる不動産への影響を調査するため、第 3 回アンケートを実施しました。アンケートは、2021 年 1 月 13 日(水)〜1 月 25 日(月)に当社メルマガ購読の顧客にインターネットで実施し、528件の回答を得ま した。
調査の内容は、前回に引き続き、「売買スケジュールへの影響」や「不動産価格への影響」など不動産売買における 影響を中心にアンケートを行なっており、業種別データや前 2 回アンケート結果との比較もレポートしています。 特徴的であった調査結果としては、売却希望価格と購入希望価格の比較で、購入希望価格の方が「価格を下げた」と いう回答が多く、購入希望者はコロナ禍に応じた価格の下落を期待しており、売主と買主に姿勢の乖離がみられ、さらに は、購入意欲の側面でも底堅さがうかがえる結果となっています。 また、売却および購入希望価格で影響を受けていないアセットとしては、「一棟マンション・アパート」、「オフィスビル」に回答 が多く集まっており、不動産売却による資金調達よりも不動産購入による収益補完の検討者の方が多いことから、先行 き不安による短期的な資金繰り施策ではなく、⻑期的に経営を補完していく考えへ目線が広がっていることがうかがえる結 果となりました。
当社は、調査データ公開等を通じ少しでも不動産市場の把握や不動産に係る課題解決にお役立ていただけるよう、 今後も調査を継続し、サービスの充実に努めてまいります。
<本件に関するお問い合わせ先>
三菱地所リアルエステートサービス株式会社 担当:総務部広報室 田中 TEL:03-3510-3110
<お客さまからのお問い合わせ先>
担当:マーケティング部 戎野 TEL:03-3510-8037

◎参考資料

【概要】
サンプル数:528 回答
調査期間:2021 年1月 13 日〜1月 25 日 調査方法:メールマガジンによるアンケート収集
【レポート抜粋】
◆2019 年度と比べて 2020 年度の事業環境の見通しをどの様に予想していますか。

コロナ禍の⻑期化により売主として売却希望価格にどのような影響がありましたか。
コロナ禍の⻑期化により買主として購入希望価格にどのような影響がありましたか。

売却希望価格に影響が出ていない不動産の種別 (選択肢の用地を含む)を教えてください。
購入希望価格に影響が出ていない不動産の種別 (選択肢の用地を含む)を教えてください。

※すべてのアンケート調査レポートについては、下記サイトよりダウンロード頂き、ご覧ください。 <ダウンロードサイト> https://go.mecyes.co.jp/inquiry19-COVID-19-SurveyReport-3/
すべてのアンケート調査レポートをダウンロードいただくと以下調査内容について確認出来ます。

お客様の包括的な状況について
・2020年度の事業見通しをどのように予想しているか ・コロナ禍の⻑期化は企業活動に影響を及ぼしているか ・新型コロナウイルス感染拡大防止のため、どのような対策を新たに実施したか等

不動産売却の状況について
・スケジュール・意思決定にどのような影響があったか
・売却希望価格にどのような影響があったか等

不動産購入の状況について
・スケジュール・意思決定にどのような影響があったか
・購入希望価格にどのような影響があったか等

不動産による事業補完について
・投資用不動産の購入による収益補完を行う考えはあるか ・不動産に係る事業計画( BCP )対策のうち、今後検討を行う可能性があるか等

本リリースの総括

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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