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「斜め45度」の視点

2014年11月18日

第157回「プラウド京都」記者発表の質疑応答

 野村不動産は京都市内で初のプラウド物件となる、「プラウド京都麩屋町御池(全43戸)」を11月中~下旬に販売する。平均坪単価は実に370万円。プラウドとして関西圏最高水準のマンションという。最終的には購入者の4割強が京都、4割弱が首都圏、2割強が関西圏の顧客になる見込み。

 記者発表の席では色々な質問が出た。

 問「京都では今後、プラウドをどのように展開していくのか?」

 答「2件目の用地はすでに取得済み。3件目の土地は契約しつつある」

 問「京都では富裕層向け高価格帯マンションに対するニーズはどの程度あるのか?」

 答「中心部の"田の字地区"などに一定のニーズはあるが、戸数はそれほど多くはない」

 問「東京の都心では、海外からのニーズが強い。京都ではどうか?」

 答「当社では海外への販売チャネルがそれほど多くはない」

 そして、こうつけ加えた。

 補足「京都中心部のマンションは、戸数が20~30戸の小規模な物件が多い。そのようなマンションを海外の顧客が購入した場合、管理組合が機能不全に陥る恐れがない訳ではない。そのため、マンション各社の間では、暗黙のうちに国内の顧客に限定しようとする雰囲気がある」

 なぜ機能不全に陥る恐れがあるのか。分譲マンションは、所有者個人が「自由」にできる専有部と、マンション所有者全体の「合意」が必要な共用部に分かれる。この合意について、「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)は、「普通決議」と「特別決議」の2種類を定めている。

 一。普通決議

 「所有者および議決権」の「過半数の賛成」で可決。

 二。特別決議

 議案によって、「所有者および議決権」の「4分の3以上の賛成」で可決する場合や、「5分の4以上の賛成」で可決する場合などに分かれる。

 要するに、何らかの決議を行うときには、まず管理組合の総会を開くことが前提になるのだが、海外の人はその仕組みを理解していない可能性があるだけではなく、総会を欠席する心配もある。その結果、海外の人が、大規模物件のごく一部を購入するならまだしも、小規模物件の半分近くを購入すると、マンションは機能不全に陥るのである。

 この補足を聞いて、京都で活動するマンション各社の良識に触れる思いがした。

 「プラウド京都麩屋町御池」の完成予想パース。マンションは左側。祇園祭の光景を合成してある。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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