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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2019年3月5日

第312回 「2019年オリコン顧客満足度調査」で見えてきた光景

 新築分譲マンションを購入した人に満足度を聞く、「2019年オリコン顧客満足度調査──新築分譲マンション部門」の結果が、2019年2月1日に「oricon ME」社から公表された。

 同社が「報道関係者」向けに作成した「ニュースリリース」をもとに、そのエッセンスをまとめた。
<https://life.oricon.co.jp/information/204/>

(A)首都圏の1位─野村不動産
   (2017年の1位─東京建物)
   (2018年の1位─東京建物)

(B)東海の1位─大和ハウス工業 
   (2017年の1位─未調査)
   (2018年の1位─大京)

(C)近畿の1位─住友不動産
   (2017年の1位─住友不動産)
   (2018年の1位─住友不動産)

 この調査は2017年から開始された。そのため2017年・2018年・2019年という、3年分の1位をまとめて示した。

 首都圏の野村不動産、東海の大和ハウス工業は2019年に初めて1位になったが、近畿の住友不動産は3年連続で1位を占めている。

 私は「オリコン顧客満足度調査──新築分譲マンション部門」は、マンションデベロッパー各社だけではなく、不動産情報を発信する各紙・各誌、さらにはリクルート社の「SUUMO」やライフル社の「LIFULL HOME'S」など不動産情報サイトの「ニュースコーナー」にとっても「有用な調査」であると判断している。

 しかしながら、どういう訳か、「満足度調査」がきちんと報じられるケースは少ない。よって、本コラムでその面白さを伝えたいと思う。

■■■新築分譲マンション部門「調査の概要」

 調査対象者は、「過去12年以内に、新築分譲マンションに入居し、購入物件の選定に関与した人」。このとき、「男女は問わないが、年齢は25歳以上」。

 調査対象者には、「立地、周辺環境、デザイン、住戸の構造・設計、共有施設、アフターフォロー、情報提供、引渡し時の住宅確認、マンションの構造・設計、住戸設備、金額の納得感」、という11の項目について聞いた。

 回答者の数は、首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)が8287人、東海圏(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)が1071人、近畿圏(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)が3043人である。

 

 また調査企業の数は、首都圏63社、東海37社、近畿48社。

 そして調査は、2018年10月5日〜12日に実施した。

■■■首都圏の上位10社ランキング

 次に「2019年調査」だけを対象に、首都圏・東海・近畿の順に上位各社を紹介する。まず首都圏の上位10社である。

 首都圏の上位10社のうち、野村不動産、東京建物、住友不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、東急不動産の6社は、いわゆるメジャーセブンの参加会社である。すなわち「メジャーセブン強し」ということになる。

 なおメジャーセブンのうち、大京だけは上位10位に入っていないが、合計得点71.34点で11位になっているので、「本当に、惜しかった」ということになる。

 メジャーセブン以外では、4位に大成有楽不動産、5位に東急電鉄、8位に伊藤忠都市開発、10位に大和ハウス工業という名前が見える。

 この中で異色の存在は、何といっても5位の東急電鉄である。私は「東急不動産は新築分譲マンションを販売しているのに対して、東急電鉄は販売していない」と思っていたので、あわてて調べてみた。

 すると「ドレッセ世田谷下馬」「ドレッセReno青葉台」「ドレッセ洗足池」など、中小規模のマンションを販売していることが分かった。

■■■首都圏1位の野村不動産に対する評価

 1位になった野村不動産は、11の評価項目のうち、「引渡し時の住宅確認」「マンションの構造・設計」「アフターフォロー」の3項目で首位となった。

 回答者からは、次のようなコメントが寄せられた。

「敷地をぎりぎりに使うのでなく、植栽などを工夫し、余裕のある立て方をしていて、高級感がある。また、住んでから、騒音などがほとんど感じられない」(60代、女性)。

「大手の物件だけあって、担当者の対応は丁寧で信頼がおけた。内覧会での細かな指摘にも丁寧に対応頂き補修して頂きました。アフターサービスも丁寧に 対応してくれて満足しています」(60代、男性)。

 2位の東京建物は、「立地」「情報提供」「マンションの構造・設計」の3項目で高い評価を得た。

 3位の住友不動産は、「デザイン」の項目で1位を獲得した。

■■■東海の上位7社ランキング

 東海の上位7社のうち、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、大京の3社はメジャーセブンの参加会社である。それ以外には、大和ハウス工業、穴吹工務店、近鉄不動産、宝不動産の名前が見える。

 このうち「穴吹工務店」は大京グループに属し、マンションのブランド名は「サーパス」で、東海地方の静岡県に実績を持つ会社である。

 また「近鉄不動産」は基本的には近畿の会社ではあるが、近畿日本鉄道(近鉄)が名古屋に乗り入れているため、東海地方でも実績を持つ。

 そして「宝不動産」は、タクシー・ハイヤー・バスなどを中心とする宝交通のグループ会社で、1969年以降、約300棟・1万4000戸の実績を持つ。

■■■東海1位の大和ハウス工業に対する評価

 1位になった大和ハウス工業は、11の評価項目のうち、「引渡し時の住宅確認」「デザイン」「マンションの構造・設計」「住戸の構造・設計」「住戸設備」「アフターフォロー」の6項目で首位となった。 

 回答者からは次のようなコメントが寄せられた。

「近隣に他不動産のマンションがあったこともあり、ここで細かい説明や安全性の説明を受けたことが、決定のきっかけにもなった。また担当者が休日にも関わらず、内覧や相談にのってくれてとても嬉しかった」(30代、女性)。 

■■■近畿の上位11社ランキング

 近畿の上位11社のうち、住友不動産、三井不動産レジデンシャル、野村不動産、三菱地所レジデンス、大京、東急不動産の6社はメジャーセブンの参加会社である。

 それ以外には、阪急阪神不動産、日本エスリード、近鉄不動産、プレサンスコーポレーション、和田興産の名前が見える。

 このうち電鉄系の阪急阪神不動産、近鉄不動産という電鉄系2社の名前は首都圏でも耳にする。しかし、日本エスリード、プレサンスコーポレーション、和田興産という3社の名前は、首都圏ではほとんど見ることがない。

 日本エスリードは1992年に設立。新築分譲マンションのブランド名も「エスリード」で、これまでに約3万2000戸の実績を持つ。

 プレサンスコーポレーションは1997年に設立。ファミリー用新築分譲マンション、投資用新築分譲マンションともブランド名は「プレサンス」である。不動産経済研究所が作成した「2017年のマンション供給実績」ランキングでは、1位「住友不動産7177戸」に次いで、2位「5267戸」になった。

 和田興産の新築分譲マンションのブランド名は「ワコーレ」。1991年3月の事業開始からこれまでに、約470棟、1万8000戸の実績を持つ。

■■■近畿1位の住友不動産に対する評価

 近畿では、住友不動産が2017年から3年連続で1位の座を占めた。

 評価別では、11の評価項目のうち、「立地」「情報提供」「周辺環境」「マンションの構造・設計」「共有施設」「金額の納得感」「アフターフォロー」の7項目で1位になった。

 回答者からは次のようなコメントが寄せられた。

 「利便性や立地条件は申し分なく購入して良かった。建つ前の購入だったが、眺望等もイメージしやすいような説明があり良かった」(50代、女性)。

 「居住後のアフターサービスがしっかりしている。例えば台風による軽微な損害にも、迅速で丁寧な対応がされた」(60代、男性)。

 2位の「三井不動産レジデンシャル」は、「引渡し時の住宅確認」「デザイン」「住戸の構造・設計」「住戸設備」の4項目で1位となった。

■■■さらに詳しい情報を得る方法

(A)ウェブサイト「2019年・オリコン顧客満足度R調査・新築分譲マンション・首都圏ランキング 」
<https://life.oricon.co.jp/rank-new-condominiums/syutoken/>

(B)ウェブサイト「2019年・オリコン顧客満足度R調査・新築分譲マンション・東海ランキング」
<https://life.oricon.co.jp/rank-new-condominiums/tokai/>

(C)ウェブサイト「2019年・オリコン顧客満足度R調査・新築分譲マンション・近畿ランキング」
<https://life.oricon.co.jp/rank-new-condominiums/kinki/>

 この各ページには、ランキング1位〜21位に入った、各企業の詳しい採点内容が掲載されている。

 さらに、各企業ごとに「詳細を見る」という項目をクリックすると、「利用者の声」を聞くことができるので参考になる。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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