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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2024年06月04日

第424回 日本と台湾が築き上げた『地震時にお互いを助け合う関係』

その2---「2024年1月能登半島地震」 細野透(建築&住宅ジャーナリスト)

[■■] 「能登半島地震」に対する台湾の心配り

 2024年の新年早々、すなわち1月1日の16時10分に、石川県の能登半島を震源とする「能登半島地震」が発生しました。

【A】死傷者数「死者 244人(うち災害関連死15人)」
【B】負傷者「1297人(2024年3月26日14時時点)]
【C】被害総額「1.1兆円 - 2.5兆円(各地の震度からの推計)

(画像は、建築専門誌「日経アーキテクチュア「2024年1月25日号」の表紙から引用)

 この「能登半島地震」では、日本の国民は再び「台湾のお世話」になりました。この地震に関連して毎日新聞は、次のように報じています。

[■■] 台湾の蔡英文総統からのメッセージ

 台湾の蔡英文総統は1月1日、石川県能登地方を震源とする地震について、自身のX(ツイッター)アカウントに次のようなメッセージを残しました。「現地の皆さまがご無事であること、そして一日も早く日常生活を取り戻せることを願います」。

 さらに、次のように表明しました。「被災者の救助活動や生活再建のために6000万円を支援したい」。

 「また、救助隊の派遣を準備しています」。

[■■]日本と同様に、台湾でも地震が多い

 台湾では1986年11月と、1999年9月に、それぞれM(マグニチュード)7を超える地震が発生。このうち99年の地震は死者2413人、負傷者8700人という甚大な被害をもたらしました。近年でも2022年9月にМ7・3の地震が発生しています。

 そしてごく最近、すなわち2024年4月3日には、台湾東部でM(マグニチュード)7・2の地震があり、震源に近い花蓮県では、震度6強の揺れを観測しました。

 4月上旬の時点では、13人の死亡が確認されたほか、景勝地の太魯閣渓谷の周辺などで「連絡が取れなくなっている6人の捜索」が続いています。この地震について、「台湾の気象当局は、99年以来の大地震」との認識を示しています。

[■■]以上のような歴史を背景に、日本と台湾の両国は、地震があるたびに助け合う関係を築く

 29年前の「阪神・淡路大震災」では、台湾から神戸市におよそ2000万円の義援金が送られたほか、県には飲料水や寝袋などの物資が届けられました。

[■■]台湾人はなぜこんなに寄付をするのか?

 京都市市民活動総合センターが運営する「情報共有ポータルサイト」 は次のように説明しています。

 近年、被災した国への寄付金額が常に上位である台湾は、世界に注目されている。特に、東日本大震災に対し、台湾が世界一高額となる220億円超えの義捐金を寄付した。

 また、今年のネパール地震の後、台湾は地震が発生してから数日間で、約2億2千万円を送金したが、これは世界第2位である。寄付する理由は、「宗教、歴史、文化、政治環境、社会と深くかかわっている」からではないかと考える。

 そして、台湾人に寄付の理由を聞けば、仏教用語の「因果応報」に近い答えが多いように感じる。よい行いをすればよい報いがあるという強い信念が、社会に浸透しているのである。

 また、歴史的にみれば、戦後、台湾は長期間、国際的に孤立した状態が続いていた。そのため、互恵の精神を重視する傾向にある。海外へ援助していれば、「いざというときは、そのお返しとして、海外からの援助を受けられる」と考えているのである。

 そして、台湾人に寄付の理由を聞けば、仏教用語の「因果応報」に近い答えが多いように感じる。よい行いをすればよい報いがあるという強い信念が、社会に浸透しているのである。

URL< https://shimisen-kyoto.org/kifu-lab/668>

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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