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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2020年6月9日

第353回 住友不動産「コロナ対策・マンション営業方針」と三菱地所「オンライン接客・本格稼働」

 国土交通省は2020年5月、「不動産業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」(令和2年5月20日版)を公表しました。

 その内容については、前回の斜め45度コラムに、「必読資料、国交省『不動産各社向け新型コロナ対策ガイドライン』の要点」──と題して掲載済みです。

 記事のURL<https://v3.realnetnavi.jp/column/p/p0352.php>

【■■住友不動産のマンション営業方針】

 国交省のガイドライン公表から数日経った5月25日。政府の対策本部は、5都道府県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、北海道)に対する緊急事態宣言を解除しました。

 それを待ち受けていたかのように、翌5月26日、住友不動産は「公式サイト・住友不動産のマンション」に、「新築分譲マンションの営業方針について」と題するお知らせを掲載しました。 


 ──弊社では新型コロナウイルス感染拡大防止のため、以下の方針のもと営業活動を行っております。お客様におかれましてはご不便とご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます──。

 ❶販売センターの営業方針
  完全予約制として、ご来場者数を制限させていただきます。
  ご予約されたお客様以外のご案内は、原則お断りさせていただきます。

 ❷営業時間
  営業時間を短縮させていただきます。
  平日「11時〜17時」
  土・日・祝日「10時〜18時」
  定休日「火・水曜日」
  ※今後の状況に応じて変更になる場合がございます。

 ❸お客様へのお願い
  1 ご来場いただくお客様におかれましては、マスクの着用をお願いします。
  2 受付入り口付近にアルコール消毒薬を設けております。
    お手数ではございますが、手指を消毒してから入室下さい。
  3 ご入場の際に非接触型体温計での検温をお願いします。
    37.5度以上のお客様はご入場をお断りさせていただきます。

 なお、ご見学いただいているお客様や弊社社員への安全配慮のため、咳や発熱および風邪の諸症状、味覚・臭覚異常、倦怠感などがあるお客様におかれましては、ご来場をお控え下さいますようお願いいたします。 

 ❹弊社スタッフの対策
  1 スタッフ全員のマスク着用
  2 スタッフ全員の手洗いおよびアルコール消毒の徹底
  3 スタッフ全員に毎日の体温・健康状態チェックを実施
   (37度以上および風邪の症状のあるスタッフは出社不可としております) 

 ❺販売センターにおける対策について
  1 予約制として来場制限を行い、間隔をあけてお席にお座りいただけますよう配慮いたします
  2 モデルルーム、シアタールーム、接客卓等について定期的に消毒作業を実施いたします
  3 販売センター、モデルルーム等の積極的な換気をしております
  4 飛沫防止対策としてアクリルパーテーションを接客卓の上に設置しております
  5 シアタールームご鑑賞の際には、極力一家族でご覧いただけるようにいたします
  6 キッズルームでのお子様のお預かりを中止しております
  7 お飲み物についてはペットボトルのままご提供させていただきます。
   なおそのペットボトルについてはお持ち帰りいただくようお願します。

 大手不動産各社のうち、住友不動産がいち早く「新築分譲マンションの営業方針」をまとめることができたのは、国土交通省の「不動産業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を参考にして、作業を進めた成果と考えられます。

 営業方針のURL<https://www.sumitomo-rd-mansion.jp/official/2013_topics_pdf/324.pdf>

【■■三菱地所──マンション販売の「オンライン接客」を本格稼働】
 それから数日経った5月29日。三菱地所と三菱地所レジデンスが連名でプレスリリースを送付してきました。

 そのタイトルは──。「STAY・HOMEしながらの、あたらしい住まい探し。マンション販売の『オンライン接客』を本格稼働。全事業エリア(首都圏・名古屋・関西・広島・九州・札幌・仙台)に拡大」。

 これは今、注目の技術ですので、詳しく紹介することにしましょう。



 ◆◆「オンライン接客」は2019年8月に導入以来、145件の実績を積み重ねてまいりました。

 その間、新型コロナウイル ス感染症の影響もあり、需要は拡大しています。顧客向けのアンケートにおいても、緊急事態宣言解除後の案内手法について、対面での接客を希望する顧客より「オンライン接客」を希望する顧客の方が多いことから、今般実施エリアを拡大し、全事業エリア48物件(5月29日現在)にて実施することといたしました。

 今後、緊急事態宣言が解除された後においても、新しい生活様式に対応するため「オンライン接客」を継続して活用してまいります。 実際に対面で行う商談や手続きをスムーズに進めることができるよう、オンラインでのご説明を充実させ、購入検討の一助としてまいります。

 また、「オンライン接客」への高い期待を受け、2020年5月15日より、三菱地所グループの住まいの総合窓口「三菱地所のレジデンスクラブラウンジ」においても、「オンライン無料相談」をスタートしました。

 「三菱地所のレジデンスクラブラウンジ」は、三菱地所グループ各社の力を結集し、住まいに関わる情報やサービスをワンストップでご提供しています。「オンライン無料相談」では、通常は、常駐しているコンシェルジュが対応する住まい相談を、ビデオ会話システムを利用し、オンラインで顧客とコンシェルジュをつなぎます。

 三菱地所グループでは今後も、新販売手法の一つとして、「オンライン接客」のサービス内容の拡充を図り、顧客の利便性や満足度の向上につなげてまいります。

【■■三菱地所──「オンライン接客」を体験した顧客の感想(抜粋)】

 プレスリリースには、ユーザー(顧客)の感想も記されています。

 ◆◆遠方など、来場できない状態なので、オンラインで説明が聞けて良かった。

 ①小さい子供がいるため、ギャラリーに行かずに、手軽に案内を受けることが出来る点が良かった(ザ・パークハウス川口本町)。

 ②小さい子供がいるため外出自粛をせざるを得ない中で、このような取り組みが普及すると今後もマンシ ョン検討がしやすい(ザ・パークハウス三田ガーデン レジデンス&タワー)。

 ③オンライン商談をやっていたから予約をしてみた。遠方のためこれまでは検討しにくかったが、これか らはこのようなシステムを積極的に利用したい(ザ・パークハウス三田ガーデン レジデンス&タワー)。

 ④妊娠中で移動が出来ないため、オンライン相談だと助かる(ホワイトマークス溝の口)。

 ⑤関西から東京に転勤が決まったが、5歳の子供もいる中、コロナで関西から家探しに動けず困っていた ところ、オンラインでくわしく一通りの話が聞け、とても良かった(ザ・パークハウス青葉台二丁目)。

 ⑥母親に説明する前に、遠方からでも事前情報を得ることができて良かった(ザ・パークハウス岐阜)。

 ⑦アメリカ(LA)に住んでおり、コロナ禍において日本政府の水際対策もあって帰国する事が叶わなかったが、共用部や室内、眺望写真を交えて説明が受けられた上に質問も投げかけられたのでより具体的な検討へ進む事ができた(ザ・パークハウス高輪フォート)。

 ◆◆資料や動画等が見やすいため、説明が分かりやすかった。

 ①非常に資料や動画が見やすいため、説明が分かりやすい(ザ・パークハウス 高輪タワー)。

 ②物件情報や間取り、日照・眺望なども非常に分かりやすい。オンラインでここまで知ることができるの は、コロナ禍においてとても助かる(ザ・パークハウス三田ガーデン レジデンス&タワー)。

 ③資金計画の提案なども自宅で聞くことができるため、とても便利(ザ・パークハウス三田ガーデン レジデンス&タワー)。

 ④対面での接客に近い形で、画面上に図面や資金計画を掲載しながら案内を受けられて理解が深まった(プライム港南台)。

 ⑤VRモデルルームを見て間取りや広さのイメージができたのはよかった(ザ・パークハウス町田テラス)。

 ⑥おりいって聞きたいような話が、自宅で聞け、さらに具体的な資料がその場ですぐに見せてもらえてと ても良かった(ザ・パークハウス青葉台二丁目)。

 ◆◆来場前に情報が得られて検討度合いが上がった。

 ①自身の質問等に一定の答えが得られたため、モデルルーム見学をしたい気持ちが強まった(ザ・パークハウス三田タワー)。

 ②来場前に検討したい住戸の価格や眺望、日照状況が分かったので、検討度合が上がった(ザ・パークハウス国分寺四季の森)。

 ③見学前に詳しく説明が受けられたので、家族間での相談も進めやすくなった(ザ・パークハウス高輪フォート)。

 ◆◆オンライン接客の手順

 ①顧客・販売担当者とも、インターネットにつながるPCと電話を用意する。

 ②販売担当者が顧客に電話、顧客は検索エンジン経由で「ベルフェイス」の接続ナンバー発行ページにアクセス。販売担当者は電話口で確認した。

 ③画面で資料やVRモデルルームを共有しながら商談を進める。(※販売担当者側はカメラで顔を映しますが、顧客側のカメラは許可をいただかない限り、販売担当者側に映りません)。

プレスリリースのURL<https://www.mec.co.jp/j/groupnews/archives/200529_mec_online.pdf>

【■■住友・三菱以外の情報について】

 この記事を完成させたのは5月31日です。その時点までに私は、いわゆるメジャーセブン各社、すなわち「住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産(三井不動産レジデンシャル)、三菱地所(三菱地所レジデンス)」について、記事のテーマに該当する「プレスリリース」あるいは「お知らせ」が存在するか、何回かチェックしてみました。

 しかし資料を入手できたのは、住友不動産および三菱地所(三菱地所レジデンス)に限られたことを、付記しておきます。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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