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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2019年11月26日

第329回 「キャリコネ」から入手した、不動産各社の「従業員満足度」&「生の声」

 グローバルウェイ社が運営するウェブサイト、「キャリコネ」を詳しくチェックしたことがあるだろうか。同社のプレスリリースには、次のような説明文が掲載されている──。

 「キャリコネ」は社員の皆様が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。社員が企業についての正直な意見を挙げられること、そしてその率直な意見を皆で共有することで、働く人と企業の両方の繁栄を目指しています──。

 キャリコネのURL <https://careerconnection.jp/>

 今回は、グローバルウェイ社のプレスリリースを情報源として、「不動産業界」および「不動産業界各企業」の現状を把握することにしよう。

【■■■不動産業界の「労働時間の満足度が高い企業ランキング」】

 まず、2019年6月21日にリリースされた、不動産業界の「労働時間の満足度が高い企業ランキング」である──。

 2019年4月以降、残業時間の上限規制の導入などを大きな柱とする、「働き方改革関連法」が順次施行されます。36(サブロク)協定を締結した場合における上限が明確に定められ、違反した場合には罰則が科されることになります。

 健康問題やプライベートとの両立に直結するだけに、長時間労働是正は働く人たちの大きな関心事といえるでしょう。

 

 そこで今回は、「キャリコネ」のユーザーによる労働時間の満足度評価の平均値を算出し、企業別にランキング化しました──。


 表を見ると、三菱地所は「4.00」というダントツの点数で、1位の座を占めた。その一方では、三井・三菱・住友・野村という大手デベロッパーの中で、住友不動産の名前が見えないのが寂しい。

 私が気になったのは、大規模な施工不良が発覚して社会的に強い批判を浴びている「レオパレス21」の名前が、10位に登場していること。本来であれば、社員が総出でこの問題に対応しなければならないのだから、「とても忙しくて、満足できない」はずなのだが・・・。

 1位になった三菱地所の社員の口コミも紹介されている。

「先方都合等で、年に数回休日出勤することがありました。残業については極端に多くはなく、繁忙期こそ残業は続きましたが、それ以外では定時に退社することも多かったです」(代理店営業/20代後半男性/年収500万円/2014年度)。

 少し驚いたのは、この口コミが寄せられたのが、2014年度とかなり古いことである。最近の口コミは見当たらなかったのだろうか?

【■■■「労働時間の満足度が高い業界ランキング」】

 不動産業界の「労働時間の満足度が高い企業ランキング」と比較したいのが、「労働時間の満足度が高い業界ランキング」である(2019年2月14日にリリース)。


 業界として上位を占めるのは、1位「医薬品」、2位「リース・消費者金融等」、3位「電気・ガス」・・・。「不動産」は29位だが、33位の「建設」には勝っている?

【■■■不動産業界の「仕事にやりがいを感じる企業ランキング」】

 次に、2019年7月12日にリリースされた、不動産業界の「仕事にやりがいを感じる企業ランキング」である──。

 最近では仕事を選ぶ際、「やりがい」よりワークライフバランスを重視する人が増えたと言われる一方、たとえ他の条件が希望通りでも、「仕事に面白みがないから」といった理由で転職を考える人も一定数います。「やりがい」が仕事選びの大切な基準の一つであることには違いありません。

 そこで、「キャリコネ」のユーザーによる仕事のやりがいに対する満足度評価(5点満点)をもとに、不動産業界の企業別ランキングを作成しました。


 表を見ると、ここでもまた三菱地所は「3.90」というダントツの点数で、1位の座を占めている。そして三井・三菱・住友・野村という大手の名前が登場しているが、「住友林業」であって「住友不動産」でないため、何だか落ち着かない。

 1位になった三菱地所の社員の口コミも紹介されている──。

「丸の内という世界でも有数の土地を開発できるというところ。仕事の規模としても非常に大きく、一人一人の裁量は非常に大きい」(財務・会計関連職/20代前半男性/年収450万円/2015年度)。

 ただし、この口コミが寄せられたのは、やはり2015年度とかなり古い。

【■■■「仕事のやりがいを感じる業界ランキング」】

 不動産業界の「仕事にやりがいを感じる企業ランキング」と比較して眺めたいのが、「仕事のやりがいを感じる業界ランキング」である(2019年2月1日にリリース)。


 業界として上位を占めるのは、1位「空運」、2位「水産・農林」、3位「電気機器」・・・。「不動産」は25位で、「建設」8位に大きな遅れをとっている。

【■■■不動産業界の「ストレス度の低い企業ランキング」】

 続いて、2019年8月1日にリリースされた、不動産業界の「ストレス度の低い企業ランキング」である──。

 1日の3分の1程度もの時間を過ごす職場。適度なストレスはパフォーマンスの向上に役立つという説もありますが、ストレス度が低いほうが長く働き続けやすいと言えるでしょう。

 では、ストレス度が低いのはどの企業なのでしょうか。「キャリコネ」ユーザーの評価(5点満点)をもとに、「ストレス度の低さ」が高評価だった順にランキングにしました。


 表を見ると、1番目や2番目のランキングと同じく、三菱地所は「3.86」というダントツの点数で、1位の座を占めている。

 同社社員の口コミも紹介されている──。「仕事の規模は非常に大きく、一人一人の裁量も非常に大きい。ワークライフバランスも高給の割にはバランスが取れているように感じる。残業代はきちんと出るし、ボーナスも多くもらえる」(財務・会計関連職/20代前半男性/年収450万円/2015年度) 

 この口コミもまた、2015年度とかなり古い。

【■■■「ストレス度の低い業界ランキング」】

 不動産業界の「ストレス度の低い企業ランキング」と比較して眺めたいのが、「ストレス度の低い業界ランキング」である(2019年2月7日にリリース)。


 業界として上位を占めるのは、1位「電気・ガス」、2位「電気機器」、3位「鉱業」・・・。その一方、「不動産」は30位で、「建設」は32位と末尾に並んでいる。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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