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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2014年10月7日

第153回年収倍率ワースト1位が東京、2位が京都の理由

 私は日経産業新聞に分譲マンションを評価する記事を月1回ペースで寄稿している。2012年までは首都圏の物件だけを取材対象にしていたが、2013年後半からは範囲を広げて近畿圏と中京圏を対象に加えた。

 それから約1年。だいぶ土地鑑がついてきたなかで、不動産情報サービスの東京カンテイが公表した「2013年新築マンション価格の都道府県別年収倍率」を眼にした。これは、新築マンションの価格を専有面積70平方メートルの住戸に換算し、各地域の平均年収で割って、年収の何倍になるかを計算したもの。

 ランキングのワースト1位から5位までを紹介する。

 1位 東京都──年収倍率9.79倍

         価格6174万円、平均年収631万円

 2位 京都府──年収倍率9.78倍

         価格4209万円、平均年収431万円

 3位 神奈川県─年収倍率9.16倍

         価格4665万円、平均年収509万円

 4位 兵庫県──年収倍率7.95倍

         価格3642万円、平均年収458万円

 5位 千葉県──年収倍率7.91倍

         価格3667万円、平均年収464万円

 ワースト1位が東京都の9.79倍だったのは、何の不思議でもない。しかし、2位が京都府の9.78倍だったのは、少し意外である。

 マンション価格は当然のことながら、おおむね地価に比例する。「土地代データ」によると、2013年の東京都の地価は76万4349円/平方メートル。一方、京都府の地価は17万0405円/平方メートルである。

 京都の地価が東京都のわずか22%強に過ぎないのに、京都のマンション価格は一気に東京都の68%強へと肉迫する。経済の原則からいって、これでは釣り合いが取れない。

 なぜこんなことになるのか。京都の事情通に話を聞くと、「1つは古都の景観を守るため、建築物に高さ規制がある影響。もう1つは、江戸時代には各藩が京都屋敷を構えたように、現在は東京の富裕層がセカンドハウスとして購入する影響」と教わった。

 「Kantei eye vol.80」から2枚の図を転載する。「首都圏の年収倍率推移」および「近畿圏&中部圏の推移」である。東京都の最高値はバブル絶頂期の1990年に記録した18.12倍。

 これに対して、京都府は1990年に、東京都を上回る18.36倍を記録している。

 振り返ると、東海道新幹線が「そうだ 京都、行こう」のキャンペーンを開始したのは1993年秋。バブルがはじけて不況になり、京都に行く人が減ったためのキャンペーン──という解釈になるのだろうか。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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