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「斜め45度」の視点

2022年5月10日

第399回 4月にスタートした「マンション管理計画認定制度」の気になる中身

 2020年6月に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」が改正され、2022年4月から、地方公共団体に「マンション管理計画認定制度」が創設されることとなりました。

 「マンション管理計画認定制度」とは、マンションの管理計画が一定の基準を満たしている場合、「適切な管理計画を持つマンション」として、認定を受けることができる制度です。

[■■]「マンション管理計画認定制度」に期待される効果

 認定を取得することで、以下に示すような効果を期待することができます。

◇区分所有者の管理への意識が高く保たれ、管理水準を維持向上しやすくなる。
◇適正に管理されたマンションとして、市場において評価される。
◇適正に管理されたマンションが存在することで、立地している地域価値の維持向上に繋がる。
◇住宅金融支援機構の「フラット35」や、「マンション共用部分リフォーム融資」の金利が引き下げられる可能性が強い。

 これを分かりやすく表現すると、「きちんと管理されているマンションとして評判が良くなる」ということです。なお、認定を受けることができるのは、自治体が「マンション管理適正化推進計画」を作成している地域に建っているマンションです。

[■■]管理計画の認定の基準(その1)

◆A管理組合の運営
 ①管理者等が定められていること。
 ②監事が選任されていること。
 ③集会が年一回以上開催されていること。

◆B管理規約
 ④管理規約が作成されていること。
 ⑤マンションの適切な管理のため、管理規約において災害等の緊急時や管理上必要なときの 専有部の立ち入り、修繕等の履歴情報の管理等について定められていること。
 ⑥マンションの管理状況に係る情報取得の円滑化のため、管理規約において、管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付(または電磁的方法による提供)について定められていること。

◆C管理組合の経理
 ⑦管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理が行われていること。
 ⑧修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと。
 ⑨直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の3ヶ月以上の滞納額が全体の一割以内であること。

[■■]管理計画の認定の基準(その2)

◆D長期修繕計画の作成及び見直し等

 ①長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠し作成され、長期修繕計画の内容及びこれに基づき算定された修繕積立金額について集会にて決議されていること。

 ②長期修繕計画の作成または見直しが七年以内に行われていること。

 ③長期修繕計画の実効性を確保するため、計画期間が三十年以上で、かつ、残存期間内に大規模修繕工事が二回以上含まれるように設定されていること。

 ④長期修繕計画において将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと。

 ⑤長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でないこと。

 ⑥長期修繕計画の計画期間の最終年度において、借入金の残高のない長期修繕計画となっていること。

◆Eその他

 ①管理組合がマンションの区分所有者等への平常時における連絡に加え、災害等の緊急時に 迅速な対応を行うため、組合員名簿、居住者名簿を備えているとともに、一年に一回以上は 内容の確認を行っていること。

 ②都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること。

[■■]東京都および横浜市の「マンション管理計画認定制度」

 「マンション管理計画認定制度」の対象になる物件が多いのは当然ながら東京都になります。それとは別に、親切で分かりやすいマンション行政で評価が高いのは横浜市です。それゆえに、2つの都市の「マンション管理計画認定制度」のウェブサイトのURLを以下に示しました。

 東京都「マンション管理計画認定制度」
<https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/kanri/02kanrikeikaku-seido.html>

 横浜市「マンション管理計画認定制度」
<https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/jutaku/sien/manshon/kanrikeikakunintei.html>

[■■]エコノミストOnlineに掲載された気になる記事

 なお、「週刊エコノミストOnline」に2022年4月11日付けで、気になる記事が掲載されています。そのタイトルは『4月スタート「マンション管理計画認定制度」の六つの課題』。
課題1 情報難民の「自主管理」
課題2 5年ごとに予算確保
課題3 修繕計画の大幅見直し
課題4 フォローアップ体制
課題5 インセンティブの有無
課題6 乱立する類似制度

 興味がある方は、次のURLをどうぞ。
<https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220419/se1/00m/020/022000c>

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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