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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2014年1月21日

第128回主張するゼネコン3「長谷工コーポレーションの立場」

 マンション施工で業界トップの位置にあるのは長谷工コーポレーション。東京カンテイの「総戸数200戸以上の大規模マンション施工実績ランキング」を見ると、同社の実績はダントツである。

 ランキング右端の200戸未満の数字にも注目してほしい。こちらでも、同社は飛び抜けている。


 しかし、同社の評価は決して高くはない。まず、建築専門誌「日経アーキテクチュア」が昨年発表した、「発注したい施工者ランキング」を紹介する。

 1位 竹中工務店

 2位 鹿島建設

 3位 清水建設

 4位 大林組

 5位 大成建設

 6位 戸田建設

 7位 積水ハウス

 8位 大和ハウス工業

 9位 前田建設工業

 9位 三井住友建設

 これは、同誌が、施工の発注業務に携わっている専門家290人(勤務先は不動産業58人、官公庁・団体45人、サービス業41人など)に聞いたもの。総じて「スーパーゼネコン強し」、という結果になっている。

 マンション専門の長谷工は、ベスト10位に入ることができず、かろうじて17位につけている。さらに、5つある判断項目のうち4項目で、同社の評価は芳しくない。

 (1)企画力やデザイン力が高い──平均以下

 (2)建築構造などの信頼性が高い──平均以下

 (3)コスト競争力が高い──全体の5位

 (4)アフターサービスやトラブルへの対応が良い──平均以下

 (5)発注者の要望を受け入れる姿勢が強い──平均以下

 要するに、期待されているのはコスト競争力だけ。ずいぶん情けない結果ではないか。このランキングを見て思い出したのが、不動産情報サービスのアトラクターズラボが、2010年10月に公表した「施工会社についての評価ランキング」。マンション入居者755人に聞いたデータである。


 こちらも、上位にスーパーゼネコンが並び、長谷工は9位に入っている。ただし、同社は「顧客満足度」が5位とまずまずだが、「知り合いに薦めたいと思う推薦度」は10位という低迷ぶり。やはり、情けない結果である。

 建築費が上昇している現在、マンションデベロッパーが頼りにせざるを得ないのは、実績があり、かつコスト競争力に強い長谷工であることは間違いない。しかし、いつまでもコスト競争力だけを武器にするのでは、企業の評価を高めることはできない。

 変革期は社風を一新する好機になる。日経アーキテクチュアの読者である「建築のプロ集団」はこう指摘した──「企画力やデザイン力、建築構造などの信頼性、アフターサービスやトラブルへの対応、発注者の要望を受け入れる姿勢」が平均値以下。

 まずは、4項目の改善に努力してほしい。それに成功すれば、アトラクターズ・ラボの調査対象である「マンションの入居者」が感じた──「知り合いに薦めたいと思う推薦度が10位」という問題も、少しずつ解消されるに違いない。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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