ヤフーとソニー不動産は２０１５年１１月に提携し、「Ｙａｈｏｏ！不動産」に新たに「おうちダイレクト」を開設した。その経緯は産経新聞と週刊住宅を拾い読みすれば把握できる。

　産経新聞電子版「ヤフーへ不動産情報提供しません／業界が取りやめ決定、ソニー不動産との提携に反発」、２０１５年１０月２３日付。

　週刊住宅オンライン「全宅連／２月下旬、ヤフー不動産への物件掲載を中止」、２０１６年１月２９日付。

　両紙の記事を要約する。　

　(1)ヤフーとソニー不動産は２０１５年７月に業務資本提携を結び、１１月に「Ｙａｈｏｏ！不動産」に新コーナー「おうちダイレクト」を開設した。　

　(2)これは、個人が「自分の中古住宅を自分が決めた価格で売り出す」ことを目的としたサイトで、ソニー不動産だけが取り扱うことができる。つまり他の不動産仲介業者は排除されたことになる。　

　(3)そのため、大手不動産業者約３００社でつくる業界団体「不動産流通経営協会（ＦＲＫ）」が、「不動産情報サイトの中立性を損ねる」としてこれに反発。それまでヤフーに無料で提供してきた、数万件の物件情報の提供を２０１５年１２月１０日で取りやめた。　

　(4)さらに、全国宅地建物取引業協会連合会（全宅連）は２０１６年２月下旬に、同協会が運営する「ハトマークサイト」からヤフーへの物件情報の掲載を中止した。

　このように「おうちダイレクト」は、ＦＲＫと全宅連を敵に回すという戦略ミスを犯したのである。その結果、どうなったのか。次に日経新聞を拾い読みする。

　日経新聞電子版「話題沸騰も成約『ゼロ』、ヤフーの不動産フリマ　」、２０１６年２月２５日付。

　「個人がインターネットを使って、マンションの売買をすることができるサイト、『おうちダイレクト』を手掛けるヤフーとソニー不動産。仲介業者頼みの現状に風穴を開けられると注目を集めたが、サービス開始から３カ月がたって成約に至ったケースはない。春商戦に向けて知名度の向上に必死だ」──。

　ちなみに「おうちダイレクト」をチェックしてみると、次のようなアイコンが掲載されていた。

　これは、個人が売り出す物件が少なすぎるために、仲介業者が売り出している物件を掲載せざるを得ない、という事情を物語っている。すなわち「おうちダイレクト」は大苦戦している。

　実はヤフーにはもう１つ誤算があった。ウェブサイトの客観的な評価・比較を行うモーニングスター社が公表した、「Ｇｏｍｅｚ不動産情報サイトランキング２０１５年１２月版」から、「Ｙａｈｏｏ！不動産」が消えてしまったのだ。

　まず「売買不動産情報サイトランキング」を見よう。上段が２０１５年１２月版、下段が２０１４年１２月版で、ともにＳＵＵＭＯが１位、ＨＯＭＥ'Ｓが２位であることに変わりはない。しかし、２０１４年版で３位につけていた「Ｙａｈｏｏ！不動産」は、２０１５年版からは姿を消してしまった。

　次に「賃貸不動産情報サイトランキング」を見よう。

　こちらは２０１４年版では１位ＨＯＭＥ'Ｓ、２位ＳＵＵＭＯだったのに、２０１５年版では１位ＳＵＵＭＯ、２位ＨＯＭＥ'Ｓと逆転した。それはもちろん大きなニュースだが、２０１４年版で７位につけていた「Ｙａｈｏｏ！不動産」が、２０１５年版からは姿を消してしまったことの方が目立っている。

　既に述べたように、不動産流通経営協会（ＦＲＫ）は２０１５年１２月１０日に、Ｙａｈｏｏ！不動産に提供してきた数万件の物件情報の提供を取りやめた。ヤフーにとって不都合なことに、その期間を挟む１２月１日～１２月１５日にかけて、Ｇｏｍｅｚが不動産情報サイトランキング調査を実施した。

　その調査では４つの評価内容を重視する。

　Ａ「サイトの使いやすさ」

　Ｂ「情報量とコンテンツ」

　Ｃ「安定性と信頼感」

　Ｄ「便利な機能・サービス」

　数万件の物件情報を削除する作業に追われて、４つの内容に関して、ヤフーに何らかの乱れがあったのではないだろうか。

　「おうちダイレクト」は今後、どうなるのだろうか。また「Ｙａｈｏｏ！不動産」は、Ｇｏｍｅｚ不動産情報サイトランキング２０１６年１２月版に、復帰できるのだろうか。