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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2011年11月29日

第50回1000戸超マンションの「第33期分譲中」

 東京カンテイが発行する情報誌「Kaytei eye」69号で、面白い記事を見つけた。同社主任研究員の井出武さんが書いた、「マンションの分譲期が多くなる理由は?」と題する記事である。

 マンションの分譲では、第1期や第2期、あるいは第1期1次や第1期2次などと、何回かに分けて販売する「期分け分譲」を行う。首都圏における新築マンションの期分け平均回数は、次のように推移してきた。

 【1回台~】

 1985年──1.12回

 1990年──1.13回

 1995年──1.42回

 2000年──1.92回

 【2回~3回台】

 2001年──2.20回

 2002年──2.75回

 2003年──3.41回

 2004年──3.42回

 2005年──3.24回

 【3回~5回台】

 2006年──3.52回

 2007年──3.47回

 2008年──3.87回

 2009年──4.93回

 2010年──5.35回

 2011年──5.10回(1~9月)

 2000年以前は、平均期分け回数はほぼ1回台に抑えられていた。しかし、2001年に2回、2003年に3回、2009年に4回を突破。2010年には、5回という「大台」に到達した。

 井出主任研究員は、この推移を「インターネット以前」および「インターネット以降」という視点で分析している。

 まず、インターネットが普及する以前には、期分けが増える要因は、物件の大型化、売れ行きの不振にあった。

 ところが、インターネットの普及により、いわば365日いつでも集客が可能な状態になると、事情が変わった。期分けする理由として、新たに、月単位で分譲戸数や契約率を把握する、という経理面の都合が加わったのである。

 井出さんは、「供給サイドとしては全戸即日完売が理想ではありますが、大規模物件ではむしろ長い期間かけて売ってもリスクが少ない販売手法への転換が図られていると言えるでしょう。期分け分譲回数の増加が即販売不振であると断じられないほど、現在の販売手法は合理化が進んでいるのです」と結んでいる。

 最後に、首都圏における戸数別の分譲期分け平均回数(2010年)を紹介しておこう。

 50戸未満──1.20回

 100戸未満──2.10回

 200戸未満──4.39回

 300戸未満──6.02回

 500戸未満──13.40回

 1000戸未満──19.60回

 1000戸以上──32.82回

 1000戸超の分譲マンションは、実に「33期」に分けて販売されている。

 しかし、実際には「第33期分譲中」などという表現は見たことがない。外部に告知する場合には、せいぜい「第3期」くらいまで。それ以上になると、さすがに世間体を気にするためか、「最終期」とか「先着順販売」といった表現を借りているようである。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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