リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2012年6月26日

第71回「青田売り」「竣工売り」と「価格改定情報」

 分譲マンションには「青田売り」と「竣工売り」がある。私は、ユーザーの立場に立つと、竣工売りの方が優れていると思う。

 しかし、現実には、住友不動産を除けば、竣工売りは少数派であり、大多数は青田売りである。

 最近、「竣工売り支持派」であるはずの私が、少しドギマギする出来事があった。A社が、小規模な「Bマンション」を、6月上旬から竣工売りすると知ったからだ。「Bマンション」はすでに検査済証を取得しており、紛れもない竣工売りになる。

 なぜ、ドギマギしたのか。それは、「A社が、業績の低下を理由に、損失金を計上する」としたニュースが脳裏に残っていたからだ。すなわち、無意識のうちに、「業績低下」→「売れ残り」→「竣工売り」という、負の連想をしていたことになる。

 しかし、A社では、小規模な物件であれば、数年前から年に1棟くらいのペースで竣工売りしていたというから、私の連想は、早とちりであった。

 頭を冷やして、冷静に考えると、マーキュリー社の「リアナビ」には、「売れ残り」かどうかを判断できる「ツール」が存在することを思い出した。「ニュース&トピックス欄」にある「価格改定情報」である。

 ここには、C社のDマンションが売れ残り住戸を抱えているため、6000万円という価格を5000万円に下げた、などという生の情報が掲載されている。よって、「価格改定情報」をチェックすることで、深刻な売れ残り物件かどうかを、確認することができる。

 そして、この「価格改定情報」を利用することにより、建築&住宅ジャーナリストとしての力量を、推し量ることも可能である。

 私が取材・執筆してポジティブに評価した物件が、「価格改定情報」に掲載され、しかも価格が10%以上安くなっていたら、「見る目」のなさを恥じるしかない・・・。おそるおそる調べると、私が執筆した物件は、幸いにも掲載されていなかった。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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