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「斜め45度」の視点

2021年5月11日

第375回 「駅近神話」ついに崩壊?東京都心5区で「中古駅近マンション」の価格下落

 不動産売却一括査定サイトを運営する「マンションリサーチ社」は、「新型コロナ問題に関連して、インパクトが強いプレスリリース」を公表しました。そのタイトルは・・・。

 都心5区「駅近マンション」価格下落
 前年比最大マイナス14.8% 
 「駅近マンション神話」ついに崩壊か? 

 ここには、不動産専門メディアだけではなく、全国紙や地方紙も「大きなニュース」として扱いたくなるような言葉が並んでいます。詳しく見ていくことにしましょう。

【■■】調査方法

 東京都心5区(新宿区・渋谷区・千代田区・港区・中央区)で、2020年に成約した「中古マンション(投資物件を除く)」の成約価格を調査する。

 調査に際しては、「築年数」「駅からの距離」「面積」という3つの項目を、以下のように分類する。

 ◆A築年数
  ① 1982年以前
  ② 1983~1990年
  ③ 1991~2000年
  ④ 2001~2010年
  ⑤ 2011年以降

 ◆B駅からの距離
  ① 5分未満
  ② 5分以上10分未満
  ③ 10分以上15分未満
  ④ 15分以上

 ◆C面積
  ① 30㎡未満
  ② 30㎡以上50㎡未満
  ③ 50㎡以上70㎡未満
  ④ 70㎡以上100㎡未満
  ⑤ 100㎡以上

【■■】調査結果の概要

  A築年数(5種類)と、B駅からの距離(4種類)と、C面積(5種類)を掛け合わせると、全部で100種類の「セグメント(区分)」ができることになります。

 都心5区の中古マンションの「成約価格の平均値」は、全体的には、「前年比+3.8%」でした。


 次に、「成約価格の平均坪単価」を、先ほど説明した100種類の「セグメント(区分)」ごとに見ると、「+16.0%」から「-14.8%」まで、大きな幅があることが分かりました。

◆成約価格の平均坪単価が「前年比+16.0%」の物件
 面積(100㎡以上)
 距離(5分〜10分)
 築年(1983年〜1990年)
 平均成約坪単価(519万5201円)

◆成約価格の平均坪単価が「前年比±0%」の物件
 面積(30㎡未満)
 距離(5分〜10分)
 築年(1982年以前〜1990年)
 平均成約坪単価(290万5474円)

◆成約価格の平均坪単価が「前年比−14.8%」の物件
 面積(100㎡以上)
 距離(5分未満)
 築年(1983年〜1990年)
 平均成約坪単価(472万2219円)




【■■】調査結果で分かった傾向

 全体的には、都心5区の中古マンションの成約価格は、「前年比+3.8%」でした。ただし、各セグメント(区分)ごとに見ると、「+16.0%」から「-14.8%」までと、大きな幅があることが分かりました。

 傾向的には、「70m²以上のいわゆるファミリーマンション」であり、かつ「駅まで徒歩5分〜10分の駅近マンション」が、上位を占めています。

 その一方で、「ファミリー向けではない70m²未満のマンション」で、かつ「駅近ではない徒歩10分〜15分のマンション」は、下位に並んでいます。

 ◆マンションリサーチ社の考察
 元来、“駅近”というのはマンションの普遍的かつ恒常的な価値の一つであったはずです。今回、上記のように、「駅近マンションの価格が軒並み大きく落ち込む現象」が見られた要因は、これまでの生活様式がコロナによって変わったことにあると考えられます。

 コロナによって大きく変わったことの一つに、「働き方」が挙げられるでしょう。出勤する人が減り、リモートワークが一般化したことにより、マンションは「居住スペース」としての役割が重視され、逆に「通勤のしやすさ 」が重視されなくなってきていると推察されます。

 プレスリリースのURL<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000013438.html>

【■■】中古マンションに関する最近のプレスリリース

 マンションリサーチ社は最近、中古マンションに関するプレスリリースを、精力的に公表し続けています。

 ◆「中古マンション流通マーケット5大都市比較、価格上昇は札幌市のみ」
   2021年2月25日

 ◆「東京都23区中古マンション流通市場、「買手(有利)市場」への転換間際
   2021年2月18日

 ◆「コロナ第3波」影響甚大、2020年12月東京都23区中古マンション売却マーケット大低迷
   2021年1月7日

 ◆「東京都23区の中古マンションは、コロナにより供給不足(売り手優勢)だったが、転換の兆候あり」
   2020年11月24日

 ◆ 東京都湾岸超高層中古マンション、今「売却するなら月島」、「購入するなら芝浦」
   2020年11月17日

【■■】マンションリサーチ社について

 マンションリサーチ社は、 不動産売却一括査定サイトを運営。2011年創業以来、各種のデータを収集してきました。

 「日本全国の中古マンションをほぼ網羅した14万棟のマンションデータ」
 「9000万件以上の不動産売出事例データ」
 「不動産売却を志向するユーザー属性の分析データ」

 同社はこれらのデータを基に、「集客支援」「業務効率化支援」「不動産関連データ販売」などを行っています。

 会社名─マンションリサーチ株式会社
 所在地─東京都千代田区九段北1丁目2番11号 エイム東京九段ビル3階
 設立年月日─2011年4月
 資本金─1億円
 URL<https://mansionresearch.co.jp/>

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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