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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2010年4月27日

第17回 「改悪建築基準法」を緊急手術

 建築基準法の改正が2段階に分けて行われる。第1段階は、「確認審査の迅速化」、「提出資料の簡素化」、「厳罰化」を3本柱として、6月1日から施行される。

 「確認審査の迅速化」では、従来、確認済証の交付まで約70日かかっていたものを、おおむね35日程度に短縮する。

 「提出資料の簡素化」では、構造関係、設備関係、材料関係の提出資料を簡略化する。

 「厳罰化」では、役所が違反建築物を見つける体制を強化し、違反設計などへの処分を徹底する。

 「確認審査の迅速化」「提出資料の簡素化」は、分かりやすくいえば、2007年6月20日に施行された改正建築基準法のうち、確認審査に関わる部分に関しては、「構造計算適合性判定(適判)」には手を付けないものの、それ以外の部分をほぼ改正以前に差し戻す内容になる。

 2007年の改正建築基準法は、多くの建築専門家から「現場の事情を知らない国土交通省住宅局建築指導課の役人による大変な悪法。関係者の手間暇だけが大幅に増えるのに対して、ほとんど効果が期待できない」と厳しく非難された、歴史に残るような「改悪」であった。また、確認審査期間がいたずらに長引いたため、深刻な建基法不況を招き、政界や経済界から糾弾されたことは記憶に新しい。

 今回の措置は、悪評さくさくだった「改悪建基法」から、無駄な部分を一気に取り除く「緊急手術」に相当するものだ。

 ただし、「構造計算適合性判定」の見直しには時間がかかるため、2011年の通常国会提出を目指して作業を進める。それが、改正の第2段階になる。

 第2段階の主役を担うのが、3月8日に発足した「建築基準法の見直しに関する検討会」(座長、深尾精一首都大学東京教授)。構造計算適合性判定制度の対象範囲、確認審査の法定期間、厳罰化の3テーマを中心に議論して、改正の内容を詰めていく。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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