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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2023年10月24日

第417回 タワーマンションの『長所と短所』を考える

 最近、『タワーマンションは大丈夫か?! 』(齊藤広子+浅見泰司 編著)と題する書籍を、読み直す機会がありました。

 同書の発行(プログレス社)は、2020年4月30日なので、今からから約3年前の書籍ということになります。齊藤広子氏は「横浜私立大学・国際教養学部」教授で、浅見泰司氏は「東京大学大学院・工学系研究科・都市工学」専攻教授です。

「必読の書」の表紙

 本書は、経済学、都市工学、不動産アナリスト・コンサルタント、建築学、不動産鑑定、居住学、弁護士等々の15人の専門家が協力。『タワーマンションは本当に大丈夫か』という、誰もが抱いている疑問に迫った初めての書籍です。

 換言すると、「タワーマンション」に関心を持つ人にとって、『必読の書』ということになります

[■■]「Amazon書店」に掲載された説明文

 インターネットの「Amazon書店」には、次のような説明文が掲載されていました(2020年4月18日付)----。

 ■タワーマンションを、いろいろな切り口からとらえた14本の論文と、座談会の記録です。正直、表面的な分析に留まるものや、両論併記に終わっているものもあります。

 ■タワーマンションを長期的に見た場合、最大の心配事は「管理がうまくいかなければ、廃墟になる」ことではないでしょうか。

 ■50年後の日本が どうなっているか、実際には見届けられないかもしれませんが、高齢化が進むこと、及び移民を積極的に受け入れなければ、人口も減少することは、間違いありません。

 ■もし、「タワーマンションに残る人が、気力・体力の衰えた高齢者や、部屋の転売を狙うだけの不在所有者(投資家・相続人)ばかりになったとしたら、どうでしょうか。

 ■年々増加していく修繕費を管理費や積立金でまかなっていくのは、難しくなりそうです。また、取り壊しや建て替えには、通常のマンションと比べ、莫大な費用がかかります。

 ■この問題(および対応策)を深掘りしていけば、読み応えのあるものになったでしょう。

[■■]『住まいの教科書』という、新たな情報源

 「Amazon書店」の情報だけでは、なんだか物足りない感じです。それゆえに、「別の情報を」求めて、インターネットで「アレコレ」検索してみました。すると、『住まいの教科書』という、興味深い情報源にたどり着きました
 URL< https://sumai-kyokasho.net>

 この『教科書』には、「タワーマンション」、「賃貸」、「引越し」、「インターネット」という、『4種類の選択肢』があります。

 念の為に付け加えておきますが、この『住まいの教科書』は『書籍』ではなく、『インターネットに掲載されている教科書』です(上記の画像)。よって、誰でもすぐに利用することが可能です。

 4種類の選択肢のうち「タワーマンション」を選択すると、以下に示す画像に辿り着きます
 URL< https://sumai-kyokasho.net/category/tower-apartment/>

 そして、画面の中央部には、次のような説明文が掲載されています。

 「タワーマンション」の契約前に知っておくべき全知識。物件ごとのデメリットなど、タワーマンションを借りる前、購入する前に必ず知っておくべきことを解説します。

[■■]『住まいの教科書』「タワーマンション」の詳しい中身

 まず冒頭に、次のような案内文が掲載されています…。

 「タワーマンション」の契約前に知っておくべき全知識。物件ごとのデメリットなど、タワーマンションを借りる前、購入する前に必ず知っておくべきことを解説します。

 その上で、「よく読まれている記事」 「新しい記事」 「おすすめ記事」という3タイプの記事を紹介しています。

■「よく読まれている記事」6本

 ①家賃の安い賃貸タワーマンション83選|エリア別に一覧で比較!
 ②タワーマンションの低層階のメリットと実際に住んでわかった問題点
 ③タワーマンションを買って後悔した10人の事例と購入の全注意点
 ④タワーマンションは騒音がひどい?音に悩まない物件選びと暮らし方の全知識
 ⑤タワーマンションは地震があっても大丈夫?知っておくべきリスクを全解説
 ⑥タワーマンションの夜景を総まとめ|おすすめエリアと失敗しない選び方

■「新しい記事」6本

 ①「パークタワー豊洲」の中古物件を購入する前に知るべき全知識
 ②「ベイサイドタワー晴海」の賃貸で失敗しないための全知識
 ③プロが教える「パークタワー東雲」の賃貸で失敗しないための全知識
 ④「キャナルファーストタワー」の賃貸で失敗しないための全知識
 ⑤プロが教える「晴海テラス」の賃貸で失敗しないための全知識
 ⑥ザ・湾岸タワーレックスガーデンの賃貸で失敗しないための全知識

■「おすすめ記事」4本

 ①知らずに契約すると後悔する!タワーマンションの全7つのデメリット
 ②六本木の賃貸タワーマンション18棟を徹底比較!おすすめタワマン7選
 ③港区でおすすめのタワーマンション47選|人気の13エリア別に賃貸のプロが厳選!
 ④新宿の賃貸タワーマンション27棟を徹底比較!おすすめタワマン7選

[■■]『タワーマンションの全7つのデメリット』とは?

 「おすすめ記事4本」のうち、『①知らずに契約すると後悔する!タワーマンションの全7つのデメリット』の内容を、以下に要約してみました。

 ❶ 宅配便の受け取りが面倒
 ❷ ベランダに物が干せない、物が置けない
 ❸ エレベータで時間がかかることがある
 ❹ 共用施設の予約が取れない
 ❺ 住人の質がバラバラ
 ❻ 引越しの手間や費用が増える
 ❼ 地震の時に揺れやすい

 『7つのデメリット』を見ると、いずれも「そうだろうなぁ」と納得できる内容です。

[■■]『その他、人によっては気をつけたい5つの注意点』とは?

 次に、『5つの注意点』を紹介します。

 ❶ 修繕費用が上がるリスクがある
 ❷ 階数で格差を感じる可能性がある
 ❸ 毎月の管理費が高くなりがち
 ❹ 部屋によっては夏場に暑い
 ❺ 電車の騒音でうるさい可能性がある

  これもまた、「そうだろうなぁ」と納得できる内容です。

[■■]『それでもタワーマンションが人気な理由』

 上記のようなデメリットを持っていても、住みたい人が多い理由を示しています。

 ① 周辺環境の利便性が高い
 ② セキュリティ性が高い
 ③ 構造がしっかりしていて、耐震性・防音性に優れる
 ④ 建物内に便利な施設が充実
 ⑤ コンシェルジュサービスが駐在しているマンションもある
 ⑥ 上層階は虫が出にくい

 

 私はこのうち、「③ 構造がしっかりしていて、耐震性・防音性に優れる」という項目には、必ずしも賛成できません。それは、何故でしょうか?

 その理由を明確にする目的で、YAHOOの検索ボックスに、「タワーマンション 長周期地震動」と入力してみました。すると、「NHK首都圏ナビ」のウェブサイトに掲載されている情報が、眼に入りました。

[■■]長周期地震動とは、「高層マンションの揺れ」と「エレベーターの注意点」

 URL< https://www.nhk.or.jp/shutoken/shutobo/20220318a.html>

 記事の要点を、以下にまとめてみました。

 「階級1」室内でほとんどの人が揺れを感じる。
 「階級2」なにかにつかまらないと歩くことが難しく、本棚の本が落ちることがある。
 「階級3」立っていることが困難。固定していない家具が動いたり、転倒したりすることがある。
 「階級4」立っていることができず、固定していない多くの家具が転倒。壁にひび割れや亀裂が多くなる。

 このように長周期地震動に襲われれば、高層マンションの住民は、かなりのダメージを受ける恐れがあるのです。それに、気を付けなければなりません。

 長周期地震動の階級

 「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラの取り組み」および「GD賞受賞のポイント」を説明しています。

 G◆「1日密着」三菱地所レジデンス入社3年目の技術系社員に密着してみた!
   建替事業部のお仕事〜 老朽化したマンションを新しく建替えるお手伝いをする部署です。

 H◆「1日密着」三菱地所レジデンス社員の1日(販売編)
   販売部は、モデルルームで「新築マンションや戸建て」を、お客様にご案内することが主な仕事です。

 I◆「施工不良物件」
   入居したては買い出しやら、挨拶などで、出入りが多い。そんな時に鍵の開け閉めに違和感を感じた。

 「防犯の要となるドアに不具合があっては」と、ドア各部を触っているうちに、上部のストライク(ラッチ受け)が外れた。新築の分譲マンションに入居初日で最悪の気分に。

 次の日に、入居開始から1か月ほど、「アフターサービスの一環として滞在する」スタッフに報告。すぐに施工業者に連絡して向かわせるようにすると言われたが、「三菱の方を必ず立ち合わせるように」と念押し。

 数時間後、三菱のアフターサービス担当者と施工者の作業員2名が到着。名刺を受け取った後に、施工不良の手直しを開始してもらう。

 ストライクのガタつきに関しては、「耐震のための遊びなので適正」と説明を受けたが信用できず、後日メーカーに問い合わせをして再確認。

 このような仕打ちを受けて、常に粗を探すようになってしまった。その他の内装施工も適当さが目立つ。金額に見合わなさすぎる粗悪な施工に気持ちが下がるばかり。

[■■] 三菱地所レジデンスの「YouTube活用戦略」に対する感想

 三菱地所レジデンスは「YouTube」に、どれくらいの情報を掲載しているのでしょうか。ざっと数えてみると、600〜700点になりました。ものすごい分量です。

 全体像をざっと見渡して私がとても驚いたのは、同社が優良物件だけではなく、いわゆる「施工不良物件」も掲載していたことです。「臭い物に蓋をする」のではなく、「自戒の念を込めて」キチンと公開している姿勢には好感を抱くことができました。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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