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2015年9月15日

第187回年収倍率ワーストランキングに「3つの異変」

 不動産情報サービスの東京カンテイが公表した「2014年新築マンション価格の都道府県別年収倍率」に3つの異変が生じた。これは、新築マンションの価格を専有面積70平方メートルの住戸に換算し、各地域の平均年収で割って、年収の何倍になるかを計算したもの。

 ランキングのワースト1位から5位までを紹介する。

 1位 京都府──年収倍率10.98倍

         価格4706万円、平均年収429万円

         2013年は2位(9.78倍)

 2位 石川県──年収倍率10.97倍

         価格4214万円、平均年収384万円

         2013年は13位(7.01倍)

 3位 東京都──年収倍率10.61倍

         価格6673万円、平均年収629万円

         2013年は1位(9.79倍)

 4位 神奈川県─年収倍率10.11倍

         価格5009万円、平均年収496万円

         2013年は3位(9.16倍)

 5位 埼玉県──年収倍率9.24倍

         価格4254万円、平均年収460万円

         2013年は6位(7.90倍)

 1番目の異変はワースト1位に京都府、2位に石川県が浮上する一方、2013年にはワースト1位だった東京が3位に後退したこと。

 このうち1位の京都府では富裕層向けの高額マンションが多く供給されたため、価格が2013年の4209万円から2014年の4706万円へ約12パーセント上昇した。その結果、年収倍率も9.78倍から10.98倍へと上昇した。

 また2位の石川県では北陸新幹線の開業を見込んで、価格が2013年の2806万円から2014年の4214万円へと、実に1408万円、率にして約50パーセントも跳ね上がった。

 そして3位の東京都では価格が2013年の6174万円から2014年の6673万円へ8パーセント上昇し、価格だけを見ると最高額だった。これは建築コストを販売価格に転換した「新価格」マンションの登場と、富裕層を対象にした高額マンションの供給が増えてきた影響と思われる。

 2番目の異変は平均年収だけを見ると、2013年から2014年にかけて、京都府がマイナス2万円、石川県がマイナス16万円、東京都がマイナス2万円、全国平均でもマイナス6万円と落ち込んでいること。

 3番目の異変は東京都の年収倍率が10倍を上回ったのは、過去30年間で1990年代の「バブル期」および2007年頃の「ミニバブル期」以来であること。東京カンテイは「昨今の新築マンション価格が一般勤労者の平均年収に対していかに高騰しているのかがうかがえる」と分析している。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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