リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2014年2月4日

第129回「ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」問題とインターネット掲示板

 週刊ダイヤモンド(2014年2月8日号)にショッキングな記事が掲載された。「三菱地所×鹿島で欠陥工事、億ション解約騒動の顛末」。東京都港区に建つ、完成間近の億ションで、工事に多数の欠陥が見つかり、購入者の契約解除にまで発展した。三菱地所レジデンスと鹿島というビッグネームが組んだ物件に何があったのか──。

 完成間近の億ションとは「ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」。また、多数の欠陥とは、配管や配線を通すための「スリーブ」といわれる貫通孔が、設計図が示す通りに入っていなかったこと。全部で6000あるはずのスリーブのうち、1割にあたる600個所の孔がなかったり、位置が間違っていたりしたという。

 詳しくは同誌を読んでいただくことにして、筆者が注目したのは、「欠陥が発覚したきっかけはインターネット掲示板への、匿名の書き込みだったと伝えられている」という指摘である。

 インターネット掲示板とは、日本最大と称される「マンションコミュニティ」(e-mansion)のことであろうか。こう見当を付けてアクセスすると、2月3日時点では次のようなことになっている。


 5つの掲示板があって、そのうち3つはすでに閉鎖済み。問題の書き込みがあったのは2013年12月上旬以前とされるので、最早、確認することはできない。

 残る「1 ザ・パークハウスグラン南青山高樹町 その3」を見ると、野次馬がわいわい騒いでいるだけなので、読んでも時間のムダである。

 また、「2【契約者用】ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」を読むと、契約者と思われる人は真面目なやり取りをしているが、途中からは野次馬が加わって興味本位に振る舞っているので、内容が荒れて果ててしまっている。少しは役に立つが、大くは時間のムダである。

 筆者の経験則によれば、こういう場合には、念のためにもう1つだけチェックする必要がある。Googleの並びにしたがって、2番手に掲載されているgoo住宅・不動産「みんなのマンション探し」をチェックすると大当たりだった。


 このうち2番目の契約解除問題をたどると、探している投稿は4番目のスレッドにあることが分かった。

 No.865 by関電工 2013-12-07 00:27:19

 「よくこんなもん買うよね(笑)。現場の実態を知らないやつら多すぎ。コア屋が常駐してるクソ現場。部屋内もコア抜いてるで。まあクズ中のクズ。設備は関電工なんだが、やらかしすぎ。地所は知らねえけど、鹿島もグル。鹿島はやめな」。

 No.870 by匿名さん 2013-12-07 10:25:45

 「画像、確認したんですが、私が誰かが特定されかねないんですよね。UPにするなりして近日中にはお出しします。ちなみに部屋内は躯体打ち込み時に衛生などの縦の配管用のスリーブ入れ忘れによるコア抜き多数。地下はダクトや配管のルートなしにより、壁がほとんどなくなった様な所さえあります。全て、関電工。強度なんてあったもんじゃありません。コア抜きは犯罪ですんで」。

 この865と870は同一人物で、問題発覚のきっかけになった当事者と思われる。言葉は少し汚いが、内容は週刊ダイヤモンド等の記述に一致している。

 その後に、印象に残る投稿があった。

 No.923 by管理担当 2013-12-17 00:08:42

 「管理担当です。いつもご利用ありがとうございます。住宅の購入検討を目的とした当サイトのご提供趣旨に反する投稿が散見されたため、関連する投稿の一斉削除を行わせていただきました」。

 要するに、いろいろ削除したけれど、問題発覚のきっかけになった865と870の投稿は残したのである。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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