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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2017年6月6日

第249回倒産した週刊住宅新聞社から届いた1通の手紙

 5月1日に倒産した週刊住宅新聞社から、先日、「購読者様各位」と記した1通の手紙が届いた。内容を要約する。

 ──弊社は、2017年5月1日付けをもちまして、すべての事業を停止し、事後処理を弁護士に一任し、破産手続き申請の準備に移行することになりました。購読者様に対して、『週刊住宅』を5月8日号以降、お届けできなくなりましたことをお詫び申し上げます。

 当社としては、年間購読料(送料込み・税込み1万9980円)を支払っていただいた購読者様に対しては、未発行月数に相当する購読料を返還する義務がありますが、倒産によりお返しすることができない状態になりました。

 そこで、購読者様において、未発行月数に相当する購読料について、債権として届ける方は、別紙「債権調査表」にご記入の上、弁護士の事務所までお知らせ願います。

 なお、現在の資産状況からすると、購読者様への配当(=購読料の返却)は望めないのが現状です。その点をご斟酌いただき、お届けいただくようにお願い申し上げます──。

 これは、「支払い済みの購読料を返却できない状態」になっているため、「仮に弁護士事務所に連絡したとしても、事情は変わらないので勘弁してください」という趣旨の連絡である。

 私は毎年12月に1年間分の購読料を支払っていたので、「12カ月分 ~ 4カ月分=8カ月分(1万3320円)」の損害ということになる。

 株式会社などが破産した場合、その財産は、次のような順番(優先順位)で配分される。

 A 破産手続きに必要な費用(連絡費、集会費、弁護士費用など)

 B 国税・地方税などの税金

 C 従業員の賃金(破産手続を開始する前の3カ月分の給料)

 D その他の債券(一般破産債権、これは読者が前払いした購読料などを意味する)

 私としては購読料が戻ってこないことはキッパリ諦めるとして、同社の従業員(約50名)がきちんと給料を受け取れていたかどうかが気になるし、今後の身の振り方も心配だ。どうか、いい転職先が見つかりますように。

 帝国データバンクによれば、週刊住宅新聞社は不動産専門紙『週刊住宅』を発行するほか、書籍『うかるぞ宅建士』シリーズ、『うかるぞ社労士』シリーズなどの発行も手がけ、2006年9月期には年売上高約10億円を計上していた。

 しかし『週刊住宅』の購読数が減少していたのに加えて、出版事業の提携先がなくなったため、2016年9月期の年売上高は約6億円に落ち込んでいた。負債は約2億5000万円とされる。

 ウェブサイト「週刊住宅online」には、今年5月末日時点で、『週刊住宅』の発行部数は9万5000部と記してある。それに購読料(1万8500円+消費税)をかけると、「1万8500円×9万5000部=17億5750万円」になるので、2016年9月期の年売上高約6億円とは大きく乖離している。要するに、実際の発行部数は約3万部前後だったと思われる。

 また、「読者層は不動産業界および関連企業(デベロッパー・住宅メーカー・流通業等)が59.5パーセント、官公庁・団体・一般企業が7.5パーセント、個人事業主・専門技術職が4.5パーセント、住まいの情報を求める一般ユーザー28.5パーセント」となっている。しかし、同紙の内容からして一般ユーザーが購読していたとは考えられない。

 私は不動産業界の専門紙としては、かつて『日刊不動産経済通信』『住宅新報』『週刊住宅』の3紙を購読していた。しかし『日刊不動産経済通信』は情報量が多すぎて読む暇がないため購読を中止し、『住宅新報』は『週刊住宅』と似た感じであるため購読を中止し、今回は唯一残っていた『週刊住宅』が倒産してしまった。

 今後はどうしようか。アレコレ検討したが、「マンション情報に関しては、インターネットの4メディアを眺めれば十分」という結論になった。その4メディアとは、不動産流通研究所の「R.E.port」(無料)、不動産経済研究所の「日刊不動産経済通信」(無料部分&有料部分)、東京カンテイの「トップページ」(無料)、リクルートの「SUUMOジャーナル」(無料)である。

 なお、Mercury社の「リアルネット(Realnet)」の会員であれば、「Realnet ニュース」という、視角的に見やすいウェブサイトを利用できる。

 (「Realnet ニュース」の画面)

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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