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「斜め45度」の視点

2014年4月8日

第135回南青山の鹿島建設に続き、白金で大成建設が施工ミス

 東京都港区南青山に建設中の高級マンション「ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」で鹿島建設による施工ミスが問題になっている最中に、今度は港区白金に建設中の高級マンション「グランドメゾン白金の杜 ザ・タワー」で大成建設による施工ミスが発覚した。

 ちなみに、「南青山高樹町」の平均坪単価は約456万円で、「白金の杜」は約457万円。ほぼ同額の高級マンションである。

 「グランドメゾン白金の杜 ザ・タワー」概要

 所在地─東京都港区白金6丁目

 構造─鉄筋コンクリート造 

 規模─地上30階・地下1階・塔屋1階

 総戸数─334戸

 平均専有面積─75.76平方メートル

 平均価格─1億469万円

 平均坪単価─約457万円

 竣工予定─2015年6月

 引渡予定─2015年7月

 事業主─積水ハウス

 設計・施工─大成建設

 「白金の杜」は2013年1月に着工し、現在は地下躯体を工事している最中。発覚した施工ミスとは、地下階を支える鉄筋コンクリート柱の鉄筋不足。計34本ある柱のうち19本で、主筋を固定する補強筋の一部が取り付けられないまま、コンクリートが打設されていた。

 ただ今回は、今年2月に大成建設が施工ミスに気付き、その翌日に積水ハウスに報告・協議。柱のコンクリートの不要な部分を削って補強筋を設置し、再打設する作業に入り、手直し工事は4月上旬に完了する。このように早い段階で施工ミスを発見し、その後の対応策も適切だったため、問題は早期に収束する見込みで、販売活動にもほとんど影響を及ぼさないと思われる。

 日経BP社の建設・不動産総合サイト「ケンプラッツ」はこう報じた。「積水ハウス広報部が、『契約者には、経緯と事実関係を説明し、問題がないことを伝える予定。安心してもらえるまで説明していく』とコメントした」。

 「白金の杜」の第1期販売は即日完売し、3月25日時点で218戸が契約済み。4月中旬に第2期5次販売を予定している。

 一方、「南青山高樹町」では、三菱地所レジデンスが3月中旬に開催した契約者向けの説明会で、以下の3点を説明した。

 一。建物を解体して再建築する。

 建物の杭と基礎の一部だけを残し、それ以外は撤去して再建築する。解体に19カ月、再建築に18カ月、検査や内覧会等に2.5カ月、合わせて39.5カ月かかる見込み。今年6月頃に着手して、スケジュール通りにいけば、2017年9月頃に新しい建物が完成する。

 二。契約者に契約の解除を要請する。

 現段階では建物の引き渡し時期を確約する状況にないとして、契約の解除を要請した。契約解除に伴って、受領している手付金(価格の1割)を返却するのに加えて、売買代金の2割の金額を迷惑料として支払う。

 三。契約者にオプション権(選択権)を付与する。

 主たるオプションは、これから再建築される「ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」を、同じ条件(住戸、価格)で優先的に購入できる権利。今回の不祥事を教訓にして、完成した住戸を契約者が実際に内覧した後に、オプション権を行使できる仕組みになっている。

 契約者の中には、南青山高樹町という土地に住むことを強く希望している人がいて話し合いが長引いていた面があったが、オプション権を付与したことで問題は円満に解決するものと思われる。

 なお、三菱地所レジデンスと鹿島建設は、建物の取り壊しと再建築の費用について、鹿島建設が負担するという内容で基本合意に達した。

 「ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」概要

 所在地─東京都港区南青山7丁目

 構造─鉄筋コンクリート造

 規模─地上7階、地下1階、塔屋1階

 総戸数─86戸(うち83戸が契約済み)

 平均専有面積─約102平方メートル

 平均価格─約1億4000万円

 平均坪単価─456万円

 竣工予定─2014年1月下旬

 引渡予定─2014年3月下旬

 事業主─三菱地所レジデンス

 設計監理─三菱地所設計

 施工者─鹿島建設

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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