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2013年8月20日

第113回旭化成レジが名古屋で初めての分譲マンション事業

 旭化成不動産レジデンスが、名古屋市で初めて手がける分譲マンション事業として、地上23階建、高さ約78mの超高層マンション「アトラスタワー本郷駅前」の概要を発表した。

 所在地は名古屋市名東区本郷2丁目で、地下鉄東山線「本郷」駅から徒歩1分。敷地は名古屋市東部の丘陵地で、地盤が良く、標高も約46mと高いため見晴らしもいい。

 総戸数は158戸、専有面積は約45~約104平方メートルで、今年9月上旬から販売する。また、設計は石本建築事務所、施工は西松建設で、2015年10月下旬に完成の予定。

 旭化成不動産レジは、都市市街地共同化(等価交換)事業、マンション建て替え、市街地再開発事業を3大柱に据えてマンション事業を展開してきた。アトラスタワー本郷駅前に関してもこの方針が徹底されている。

 広さ約2800平方メートルの敷地は、西松建設など4者が所有していた。西松建設から、所有するテナントビルの建替計画を相談されたのをきっかけに、最終的には等価交換事業としての分譲マンション新築計画に発展させたという。

 アトラスタワー本郷駅前の最大の売りは、「東海・東南海・南海の3連動地震を想定した制震構造マンション」であること。

 構造設計を担当した、石本建築事務所プロジェクト推進室主事の多田聡氏は、 「建物は3連動地震が2回来ても十分に耐えられる。これに対して、連動型でない通常の大地震なら、10~20回来ても耐えられる」と説明する。3連動地震が建物に及ぼす影響が、いかに大きいかが伝わってくる。

 建物は、鉄筋コンクリート造で、地震の入力エネルギーを吸収して揺れを低減する制震構造。採用された制震装置は、通常の鋼材に比べて小さい力でも伸びる反面、延性が極めて高いため大きく伸びても破断しにくい「低降伏点鋼」を使用したタイプで、せん断間柱に装着する。

 また、「ヘーベルハウスのロングライフ住宅の思想」を取り入れた平面や間取りにも特徴がある。まず、タワーマンションでありながら、全ての住戸に南面バルコニーを採用して、採光や通風に配慮した。

 ほかに、家族の成長や暮らし方の変化に合わせ、居住空間を区切って使える「グローイングルーム」の考え方を採用するなど、長く快適に住み続けられるように工夫した。




細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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