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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2011年1月25日

第26回建築設計事務所として「世界で一番エキサイティング」なHP

 今回は、いつもと少し趣向を変えて、建築設計事務所として「世界で一番エキサイティング」なホームページの紹介をする。

 設計事務所の名前はBIG(Bjarke Ingels Group)。1974年生まれの若手デンマーク人建築家、Bjarke Ingels(ビャルケ・インゲルス)が率いる、コペンハーゲンの設計事務所である。所員数は約100名。

 ビャルケ・インゲルスは、20代のころ、著名建築家Rem Koolhaas(レム・コールハース)率いるOMAで働いて腕を磨いた。そして、2001年に、ベルギー人建築家Julien De Smedt(ジュリアン・デ・スメド)とともにPLOTを設立。さらに、2005年にBIGを設立した。その独創的な作風と、精力的な活動により、デンマークで最も注目される建築家になった。

 BIGのホームページ(http://www.big.dk/)を訪ねると、トップページには、約90個のアイコン(プロジェクト)が並んでいる。このアイコンは、すべて形が違っていて、クリックすると各プロジェクトの概要を知ることができる。

 トップページの下端には、5種類のボタンが並んでいる。

 CHRONOLOGICAL(年代順)

 ALPHABETICAL(アルファベット順)

 PROGRAMMATIC(機能別)

 SCALE(スケール別)

 STATUS(進行状態別)

 例えば、STATUS(進行状態別)をクリックすると、各アイコン(各プロジェクト)が、IDEA(構想)、IN PROGRESS(設計中)、UNDER CONSTRUCTION(建設中)、COMPLETED(完成)というグループ別になるので、進行状態が一目瞭然である。

 5種類のボタンは、各プロジェクトを簡単に分類できるので、なかなかの優れ物である。

 掲載されているプロジェクトはいずれもユニークだが、本コラムは「斜め45度の視点」というタイトルなので、「斜めの集合住宅」に的を絞る。

 まず、VM Housing(http://www.big.dk/projects/vm/)である。これは、コペンハーゲンに立つ戸数114戸の集合住宅で、驚くことにバルコニーは「V字型」である。「斜めのバルコニー」は日本ではあり得ない。

 次に、Mountain Dwellings(http://www.big.dk/projects/mtn/)である。これも、コペンハーゲンに立つ戸数80戸の集合住宅で、建物の下層階が駐車場、上層階が居住用になっていて、横から見ると「傾斜が緩い滑り台」のような形をしている。日本では、斜面に立つ集合住宅によく見られる形だが、コペンハーゲンはおおむね土地が平坦であるため、下層階の駐車場を傾けて、わざわざ「斜めの人工基盤」をつくったのであろう。

 そして、8TALLET(http://www.big.dk/projects/8/)。これは、コペンハーゲンに立つ戸数476戸の集合住宅で、デンマークでは最大規模になる。その特徴は、「8の字型」のプランを持つ住棟の一部を、水辺への眺望を良くするため傾斜させた、「斜めカット」である。

 掲載されている「斜めの集合住宅」自体も面白いが、その見せ方も面白いため、つい時間を忘れてしまうホームページである。時間にゆとりがある人向き。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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