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「斜め45度」の視点

2015年6月30日

第179回長谷工テーストに染まる大型マンションの外観

 長谷工コーポレーションの2015年3月期の決算説明資料を読み込む機会があった。それによると、15年3月期の民間分譲マンションを主体にした工事受注高は、対前年比で27.8%増の4642億円と好調だった。その反面、16年3月期の予想受注高は対今期比でわずかに1.3%増の4700億円と足踏み状態を予想している。

 また、首都圏と近畿圏における施工率シェアも公表された。首都圏では、13年度のシェア24.3%から、14年度はシェア26.9%と2.6%増に止まった。一方、マンションの規模別に見ると、200~400戸未満は54.0%に達したのに、大規模タワーマンションが多い400戸以上では21.0%に止まった。

 次に近畿圏では、13年度のシェア19.8%から14年度はシェア28.5%と8.7%も伸びた。またマンション規模別に見ても、200~400戸未満は49.4%、400戸以上も53.0%と市場のほぼ半分を占めた。

 建設関連部門を合わせると、売上高4892億円(8.2%増)だったにもかかわらず、営業利益は365億円(70.5%増)と大幅に伸びた。

 同社は「建築工事では、労務不足による建築費の上昇の懸念はあるが、マンションに特化したコスト競争力および商品企画力が、事業主に評価された結果増収増益となった。また着工時期の平準化と物件の大型化によって、工事採算と利益率はともに改善傾向にある」としている。

 さて、今回発表された資料の中で、特に印象に残ったのはその特命受注比率91.9%および設計施工比率97.4%という数字である。

 これを違う視点で説明すると、長谷工テーストの外観デザインを施された大規模マンションが、首都圏と近畿圏で増えているという事実である。

 念のために情報誌「SUUMO」の最近号に掲載された物件の外観パースを見て、設計施工者を推理するテストをやってみた。すると、筆者が「これは長谷工」と感じた物件は、すべて同社の設計施工であった。二大都市圏に建つ大規模マンションが長谷工テースト一色に染まっていいのだろうか?

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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