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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2017年11月14日

第265回不動産情報サイトが「ルールに違反した広告」を掲載している実態

 今回はリクルート住まいカンパニーの『SUUMO』、ライフル社の『LIFULL HOME'S』、ヤフーの『YAHOO!不動産』など、いわゆる不動産情報サイトが「不動産広告のルール」に違反した広告を掲載している実態について考えたい。

 問題の背景を理解するため、まず「不動産広告のルール」をまとめておこう。大きく「不動産の表示に関する公正競争規約」に基づくルールと、「宅地建物取引業法」に基づくルールがあるが、ここでは前者に的を絞る。

 「不動産の表示に関する公正競争規約」に基づくルールの1番目の特徴は、最初に遵守しなければならない「規約」を定めている点である(淡いブルーの1、2)。

 2番目の特徴は、「規約」を守るための自主規制団体として、「不動産公正取引協議会」(不動産公取協)の役割を定めている点である(淡いグリーンの3、4、5、6)。

 この背景にあるのは、「行政機関は余り口を出さないようにするから、なるべく業界団体が自主的に動いてほしい」という考え方である。そして、全国9地区に設置された不動産公取協の中で、もっとも積極的に活動しているのは、「首都圏不動産公正取引協議会」である。

 そして首都圏不動産公取協のウェブサイトには「相談&違反事例」というコーナーがあり、多くの「違反事例」を掲載している。

 最新年度(2016年4月~2017年3月)に関しては、不動産会社53社の違反事例が掲載されている。この違反事例を掲載した不動産情報サイト別に分類すると、ダントツに多いのは、リクルート住まいカンパニーの『SUUMO』であった。同サイトは20件の違反事例を掲載し、全体の約38%を占めていた。

 また2番目に多いのは、ライフル社の『LIFULL HOME'S』であった。同サイトは12件の違反事例を掲載し、全体の約23%を占めていた。

 よって、ここでは『SUUMO』に広告が掲載された違反事例20件のうち、6点をピックアップする。

 違反事例の1~3は「不当表示など」である。

 最寄り駅からの徒歩時間を実際よりも短く表示していた(ケース1)──。専有面積を実際より広く表示していた(ケース2)──。架空の建築確認番号とともに、新築住宅を表示していた(ケース3)──。これらはすべて不当表示である。

 違反事例の4~6は「おとり広告など」である。

 物件が契約済みになっていたにもかかわらず6ヵ月以上も広告していた(ケース4)──。実際には存在しない物件を、架空の建築確認番号とともに掲載した(ケース5)──。2ヵ月間で63件もの問い合わせがあったが、どういうワケか、実際には契約には至っていない(ケース6)──。このように迷惑な広告ばかりである。

 この6つのケースでは、いずれも不動産会社が処分されていて、リクルート住まいカンパニー(SUUMO)は処分されていない。しかし消費者の立場からすると、「リクルートのSUUMOに掲載されていたから信用した」という面も大きかったはずである。リクルート住まいカンパニーとしても、何らかの対策が必要ではないのだろうか?

 この問題を考えるとき役立つ事例が、首都圏不動産公取協のウェブサイトに掲載された、「不動産広告の相談事例」コーナーに紹介されている。

 【相談事例】

 元付業者の図面どおりに広告したけれども、これが不動産公取協から違反表示と認定された場合、広告主にはどのような表示責任があるのでしょうか?

 【筆者(細野)による注釈】

 不動産の売買には、「元付業者」と「客付業者」が関わる場合がある。このとき、売主から物件の売却を依頼された業者を元付業者、買主を見つける役割の業者を「客付業者」という。今回は以下のような相談であった。

 (1) 客付業者が、元付業者から図面と情報を入手した。

 (2) 客付業者は、その内容を信じて、広告を出した。

 (3) しかし、広告に違反表示があったとして、客付業者が責任を問われた。

 (4) それを不満として、客付業者が不動産公取協に相談した。

 【客付業者からの質問】

 元付業者から提供された図面と情報に、最寄駅からの徒歩所要時間が「X駅徒歩5分」と記載されているので、それを信じて不動産情報サイトに広告を掲載しました。しかし、不動産公取協から、X駅からの実際の徒歩所要時間は8分であるとの指摘を受けました。当社でも計測したところ、その通りでした。

 しかし、そもそもの原因は元付業者が誤った情報を提供したことにあり、当社はその通り広告したにすぎません。このような場合でも、広告の違反の責任は当社が負うことになるのでしょうか。

 【不動産公取協からの回答】

 結論から申し上げますと、広告の違反の責任は貴社にあります。

 確かに、貴社としては、元付業者から入手した情報や図面の内容を信用して広告したものであり、間違った表示の原因は元付業者にあります。しかし広告表示の主体者は、あくまでも貴社であり、元付業者の図面の間違いを理由に表示の責任を回避することはできません。

 以上のことから、今後は、元付業者から入手した情報や図面の内容が、表示規約に照らして問題がないかどうかを精査してください。そして、表示規約に違反するものがあれば、これを修正するなど、十分注意して広告してください──。

 不動産公取協の回答から、何を読み取ればいいのだろう。

 インターネット広告を掲載する不動産情報サイトの『SUUMO』や『LIFULL HOME'S』などの側でも、「ルールに違反した広告」を排除するような方向で動いてもらいたい──。

 そんな風に示唆しているのである。

 (次回に続く)

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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