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2019年5月28日

第317回 国交省『不動産業ビジョン2030』が描くマンションの過去・現在・未来(後編)

 国土交通省は2019年4月24日、『不動産業ビジョン2030』を公表した。記事の後編では、『不動産業ビジョン2030参考資料集』が描く、マンションの過去・現在・未来像を紹介する。

 『不動産業ビジョン2030参考資料集』のURL
https://www.mlit.go.jp/common/001287963.pdf

■■■首都圏では「新築マンション」が減り、「中古マンション」が増加

 東日本レインズが集計を開始したのは平成2年である。それから26年後の平成28年に、首都圏における中古マンションの成約件数が、初めて新築マンションの発売戸数を逆転した。

 そして平成30年もまた、新築マンション発売戸数は約3.71万戸、中古マンションの成約件数は約3.72万件。3年連続で中古マンションの成約件数が新築マンションの発売戸数を上回っている。


■■■新築マンションに対する「消費者ニーズの変化」

 下に示した図表のうち、まず左側の表を見ていただきたい。リクルート住まいカンパニーの調査によれば、新築マンション探しにあたって求めた「暮らし方のイメージ」で最も多いのは、「仕事や通勤に便利」で37.2%。次いで、「子育て・教育がしやすい」(35.3%)、「日々の生活がしやすい」(34.5%)と続く。


 次に、右側のグラフを見ていただきたい。2008年〜2018年の変化をみると、「仕事や通勤に便利」「子育て・教育がしやすい」「日々の生活がしやすい」「共働きがしやすい」などへの期待が増え、特に「共働きがしやすい」は優先順位も大きく上がっている。

■■■マンションストック総数は約644.1万戸

 平成29年末時点で、マンションストック総数は約644.1万戸に達した。マンションの居住人口は約1533万人と推計されるので、これは国民の約1割に相当する。また1戸当たりでは2.38人になる。


■■■「老朽化マンション」が急増する見込み

 築後40年超のマンションは、2017年時点で73万戸に達する。そして10年後には185万戸、20年後には352万戸となるなど、今後、老朽化マンションが急増する見込みである。


■■■消費者が利用した不動産情報サイト──SUUMOが独走

 消費者の多くが、不動産ポタールサイトなどを通して、インターネットで物件探しを行い、物件情報を得るようになってきている。2018年度においては新築住宅購入者の92.4%、既存住宅購入者の91.9%がインターネットを利用した。

 それでは消費者はどの不動産情報サイトを利用したのか。下に示した図は、不動産流通経営協会が行った「不動産流通業に関する消費者動向調査(2018年度)」をベースにしたものだ。


「新築住宅購入者(青色)」と「既存住宅購入者(黄色)」を合計した『全体(緑色)』では、次のような順番になる。

 1位 SUUMO──89.3%
 2位 at home──33.0%
 3位 特定の不動産会社のサイト──20.3%
 4位 Yahoo!不動産──20.2%
 5位 LIFULL HOME'S──16.7%

 「at home」と「Yahoo!不動産」と「LIFULL HOME'S」という3社の利用率を合計しても、69.9%に過ぎない。すなわち、リクルート住まいカンパニーの「SUUMO」の強さが際立っている。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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