リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2012年8月28日

第77回ニュースリリースの「裏」を読む

 マンションデベロッパー各社、住宅メーカー各社から、電子メール等を通じて、多数のニュースリリースが送られてくる。

 今年受け取ったリリースのなかで、特に印象が深かったのは、大和ハウス工業が、2012年4月5日付けで配信した、「建設業法に基づく監督処分について」と題するリリースだった。

 「平成6年に徳島市において建築した賃貸住宅に施工上の瑕疵が判明したことに伴い、国土交通省近畿地方整備局から、本日付で、建設業法第28条第3項に基づき下記のとおりの監督処分を受けました」

 「今般の処分を厳粛に受け止め、引き続き全社をあげて信頼の回復に努めてまいる所存でございます」

 企業にとっては不名誉なネガティブ情報を、臆することなく公開して、身を引き締めようとする姿勢は見事である。

 同社がこれまで、順調に事業を拡大できた理由のひとつは、社風がいい意味で「明るく、大らか」だったことがある。このリリースにより、同社の健全さを改めて確認することができた。

 主要各社のニュースリリース配信数を調べてみた。

 大和ハウス工業──6月3本、7月10本、計13本

 積水ハウス  ──6月5本、7月5本、計10本

 三井不動産  ──6月8本、7月5本、計13本

 三菱地所   ──6月7本、7月14本、計21本

 野村不動産  ──6月6本、7月4本、計10本

 この5社のなかで、筆者が丁寧に見ているのは、大和ハウス工業、三井不動産、野村不動産などになる。

 大和ハウス工業は、事業の領域が広いので、マンション各社や住宅各社の将来像を考えたいとき、有用である。

 三井不動産は、都市再開発に関連した、注目のマンションプロジェクトが交じるので、見逃すわけにはいかない。

 野村不動産は、広く一般に配信するリリースとは別に、マンションウォッチャーを中心に配信する「即日完売」情報がある。その即完情報が多いことに、同社の勢いだけではなく、製販一体の体制による値付けの確かさを感じる。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


BackNumber


Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.