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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2013年1月29日

第92回住友不動産「ブランド名」の自由奔放

 住友不動産の「総合マンションギャラリー」新宿館を訪れて、首都圏で販売中の物件を掲載した「マンションエリアマップ」を入手した。

 「マップ」に掲載されているマンションは実に93物件。リクルートホールディングスが発行する『SUUMO新築マンション首都圏版』には、約1000物件が掲載されているが、そのうち「エリアマップ」に掲載される物件数は200件程度だから、住友不動産「マップ」の情報量は際立っている。

 この住友不動産「マップ」をじっと眺めていると、マンション名が多様であることに気がつく。

 従来、同社のブランド名には、シティハウス(小規模)、シティテラス(100戸超)、シティタワー(超高層)、グランドヒルズ(高級)の4種類があった。そこに、最近、「セントラルレジデンス(都心&中高級)」、「セントラルプレイス(都心&コンパクト)」の2種類が追加された。

 しかし、「マップ」には、それ以外の名前がある。

 【第1のパターン】

  (1) シティハウス勝どきステーションコート

  (2) シティハウス月島駅前ベイブリーズコート

  (3) シティハウス蔵前キャピタルコート

  (4) シティハウス赤羽南パークサイドコート

 これは、シティハウスの展開版として、すぐに理解できる。

 【第2のパターン】

  (1) パークスクエア相模大野タワー&レジデンス

  (2) パークスクエア湘南茅ヶ崎

  (3) パークスクエアさいたま新都心Airs Court

 これは、三井不動産レジデンシャルの「パークホームズ」「パークコート」、三菱地所レジデンスの「パークハウス」「パークテラス」と渾然一体となって、ほとんど区別がつかない。

 【第3のパターン】

  (1) ザ・グランアルト錦糸町

  (2) コンシェリア西新宿

  (3) 常盤台ガーデンソサエティ

  (4) THE ITABASHI レジデンス

  (5) THE ITABASHI テラス

  (6) ミッドプレイス八王子

  (7) リエトコート武蔵小杉

  (8) 幕張ベイタウングリーナ

 これは、もう、「なんでもあり」の世界。かなり古い話になるが、昭和30~40年代に活躍した野球解説者、小西得郎氏の決め台詞、「なんと申しましょうか」を思い出す。

 【第4のパターン】

  (1) セントラルレジデンス シティテラス目白

 これは、「セントラルレジデンス」および「シティテラス」という2つのブランドの並列型になる。

 【第5のパターン】

  (1) グランスイート不動前シティテラス

 

 これは、丸紅の「グランスイート」と、住友不動産の「シティテラス」の合体型になる。

 なぜ、このように、自由奔放になったのか。同社広報渉外担当の若山公一部長は言う。「購入者が判断材料にするのは、ブランド名ではなく、分譲主が住友不動産であるという事実。要するに、企業の力を評価してくれている。よって、物件ごとに柔軟に名前を決めている。また、複数のブランド名を組み合わせるケースもあり得る」。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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