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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2013年2月19日

第95回マンションの取材を2回連続して断られたワケ

 私は日経産業新聞の「目利きが斬る─住宅欄」、住宅新報の「住宅レビュー」という2つのコラムに寄稿している。これまでの約10年間で、記事のための取材を断られた経験が3回あったが、最近、2回連続して断られる「事件」があった。

 まず、中堅住宅メーカーA社。これまでは戸建住宅中心だったが、新規事業に取り組みユニークな分譲マンションの販売を計画ているので、取材しようと考えて連絡した。すると、会社の規模からして意外なことに、広報部門が存在しないという。電話を5回たらい回しにされて、「担当者の名前がa氏であり、会議中なので電話に出られない」と分かり、依頼の伝言を残した。

 a氏から連絡がなかったので、翌日連絡すると、a氏の代理というaa氏が電話に出た。取材趣旨を伝えたが、慣れていない感じなので、「取材依頼のメールを送るので検討してほしい」と伝えてメールした。

 次の日に、「取材お断り」の返信が届いた。理由は「新たな取り組みであり、今後、事業を延期、中止するかもしれないので、取材をお受けできない」。同社が販売する、分譲マンションへの不信感をかき立てるような、不適切な説明である。このような表現は、広報部門が存在すればあり得ない。

 A社に断られた後、次の取材先として、大手ゼネコン系のデベロッパーB社に着目した。大手ゼネコン系では、鹿島建設の開発事業本部、大成建設グループの大成有楽不動産の活動はよく知られている。一方、B社はそこそこの実績を挙げているのに対して、なぜか活動を伝える記事を読んだことがない。

 B社には250戸超の大規模分譲マンションを都区内で販売する計画がある。その取材を申し込むべく電話した。しかし、広報部門がないということで、たらい回しにされ、3度目に担当者のb氏にたどり着いた。

 b 氏に取材趣旨を伝え、「記事の掲載例を送るので検討してほしい」と依頼したところ、意外にも、「取材は受けないので掲載例は送らなくてもいい」と、即座に門前払いをくらった。理由を聞いても、何かモゴモゴいうだけだった。これにより、従来、B社の記事が見当たらなかった理由が判明した。

 しかし、B社の親会社である大手ゼネコンBB社は、少なくとも日経産業新聞の取材を歓迎している。すなわち、B社の行動もまた、広報部門が存在すればあり得ない、不適切な対応だった。

 過去に、取材を断られたC、D、E社のケースについても、簡単にまとめておこう。

 大手住宅メーカーC社の分譲マンションに関しては、広報部門から、「取材を受けたくない」として断られた。C社は、取材に消極的な会社として知られている。

 大手電機メーカーD社に分譲マンションの取材を申し込んだときには、広報部門が対応することなく、各部署をたらい回しにされて断られた。「お役所的な体質だなぁ」と感じた同社は、現在、経営不振に陥って、巨額の赤字を計上している。

 この他、小規模デベロッパーE社にもまた、広報部門が存在しなかった。

 このようにまとめてみると、取材の成否は、対象とする会社の広報マインド次第であることがよく分かる。

 さて、中堅住宅メーカーA社と大手ゼネコン系のデベロッパーB社に、立て続けに断られた後、「次に取材を申し込む相手としては、安全を期して取材経験がある会社にするのがいいか、くじけることなく未知の会社を選んだ方がいいのか?」と考えた。少し迷ってから、かつて取材を断られた小規模デベロッパーE社に電話をかけた。

 「取材をお願いしたいのですが、御社には、現在、広報部門はありますか」。「はい、あります」。広報担当者に取材を申し込んだら、即座にアポが成立した。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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