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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2020年3月10日

第347回 羽田空港発着機の「新飛行ルート」を徹底図解(前編)

 羽田空港の国際線の発着数を増やすために設定された、「東京都心の上空を通る新飛行ルート」は、2020年3月下旬から運用される見通しである。

 今回は「南風が吹く15時から19時までのラッシュ時には、新宿や表参道など東京都心の上空を、飛行機が1分に1便という尋常ではないペースで飛行する実態」について徹底的に図解する。

 なお以下の図は、特に注記がない限り、国土交通省のウェブサイト「羽田空港のこれから」に掲載された、画像データの引用である。

 URL <https://www.mlit.go.jp/koku/haneda/>

【■■■南風時と北風時、2つのルートがある理由】



 まず、2020年3月中旬まで利用される、「現在の飛行ルート」を確認しておきたい(上の図)。

 その特徴は、南風と北風が多い羽田空港に合わせて、2通りのルートが用意されていることである。それにしても、なぜ、「南風時のルート」と「北風時のルート」なのか。

 飛行機はそもそも横風に弱い。そのため飛行機は、風が吹いてくる方向に向かって離陸したり、着陸したりする必要がある。そして、羽田空港では南風と北風がよく吹く。それゆえに、「南風時のルート」と「北風時のルート」が用意された。

【■■■東京都心の上空を通る「南風時の新ルート」】

 さて、2020年3月下旬から利用される「新飛行ルート」としては、主に東京都心の上空を通る「南風時のルート」と、主に千葉県の上空を通る「北風時のルート」が用意された。


 まず、「南風時の新ルート」である(上の図)。このうち15時〜19時の時間帯は「新たな飛行経路」が利用され、それ以外の時間帯は「現行と同じ飛行経路」が利用される。

 「新たな飛行経路」(左側の図)は、品川区、港区、渋谷区、新宿区、中野区、豊島区など、主に「東京都心の上空」、および「東京湾の上空」を通っている。

 これに対して「現行と同じ飛行経路」(右側の図)は、主に「千葉県の上空」、および「東京湾の上空」を通っている。

【■■■東京東部の各区上空を通る「北風時の新ルート」】


 次に、「北風時の新ルート」である(上の図)。このうち「7時〜11時半および15時〜19時」の時間帯は「新たな飛行経路」が利用される(左側の図)。しかし、それ以外の時間帯は「現行と同じ飛行経路」が利用される(右側の図)。

「新たな飛行経路」は、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区、足立区など主に「東京の東部に位置する各区の上空」、および「千葉県の上空」と「東京湾の上空」を通っている。

 これに対して「現行と同じ飛行経路」は、主に「千葉県の上空」と「東京湾の上空」を通っている。

【■■■「住みたい街ランキング」に登場する地名がズラリ】

 続いて「南風時の新ルート」うち、品川区、港区、渋谷区、新宿区、中野区、豊島区など主に「東京都心の上空」を通り、15時〜19時の時間帯に利用される「新たな飛行経路」の詳細を説明したい(以下、「南風時・15時〜19時・都心ルート」と呼ぶ)。


 上の図は、「南風時・15時〜19時・都心ルート」の概要である。飛行機のルートと高度が描かれているのだが、縮尺が小さいため分かりにくいかもしれない。


 上の図は、「南風時・15時〜19時・都心ルート」に位置する、主な自治体や特別区の名前である。品川区、目黒区、港区、渋谷区、新宿区、中野区、豊島区など、「住みたい街ランキング」の上位に登場する地名がズラリと並んでいるのがよく分かる。

【■■■ピンク色は1時間に30便】


 上の図は、「南風時・15時〜19時・都心ルート」のより詳しい図である。このうち緑色は「南風時に羽田空港のA滑走路に着陸するルート(1時間に14便程度)」である。またピンク色は「南風時に羽田空港のC滑走路に着陸するルート(1時間に30便程度)」である。

【■■■新宿駅上空で高度1040メートル】


 上の図には、「南風時の15時〜19時に、1時間に14便程度の割合で、羽田空港のA滑走路に着陸する都心ルート」の飛行高度が示されている。飛行高度としては「現行経路案」と、それより高い「更なる見直し案」の2タイプが描かれている。

 このうち見直し案(赤字)の高度は、中野駅3800フィート(1160メートル)、中野新橋駅3400フィート(1040メートル)、恵比寿駅2300フィート(700メートル)、大井町駅1100フィート(340メートル)になっている。


 上の図には、「南風時の15時〜19時に、1時間に30便程度の割合で、羽田空港のC滑走路に着陸する都心ルート」の飛行高度が示されている。

 そして、見直し案(赤字)の高度は、新宿駅3400フィート(1040メートル)、広尾駅2300フィート(700メートル)、大井町埠頭1100フィート(340メートル)になっている。

 ここで注意しなければならないのは、南風時の15時〜19時、すなわち午後3時から7時の時間帯には、1時間に30便程度、「すなわち2分に1便という尋常ではないペース」で、飛行機が上空を通るという事実である。

 (※注)後編──羽田空港発着機の「新騒音問題」を徹底図解──に続く。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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