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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2021年1月12日

第368回 ダイキンが「コロナの冬」を乗りきる「乾燥&節電対策」を伝授

 日本の湿度は、春と秋はほどよいのに、夏はジメジメし、冬は乾燥し過ぎてしまいます。そのため冬になると、鼻や喉(のど)が「イガイガ」「ザラザラ」し、場合によっては「セキ」や「クシャミ」の回数が増えたりします。

【■■】情報1「乾燥するとコロナウイルスが飛沫(ひまつ)になって拡散しやすくなる」

 NHKの番組を紹介する「NEWS WEB」には、冬期の空気の乾燥に関係する、興味深い記事が掲載されました(2020年10月13日付け)。そのタイトルは、「新型コロナウイルス空気乾燥で拡散拡大、スパコン富岳が予測」。

 ──神戸市にある理化学研究所などの研究チームは、最新のスーパーコンピューター「富岳」を使って新型コロナウイルスの飛まつの広がりを調査していますが、今回は湿度による影響が分析されました。

 それによると、オフィス内を想定し、1.8メートル先に座る向かいの人が浴びる飛まつの数を予測した結果、次のような事実が判明しました。

 「湿度が90%の場合と比較すると、湿度が30%まで乾燥すると飛まつが霧状に広がりやすくなり、人が浴びる飛まつが3倍に達する」──。

 すなわち、空気が乾燥する冬には、鼻や喉が「イガイガ」「ザラザラ」するだけではなく、「新型コロナウイルスが飛まつ(粒状)になって拡散しやすくなる」のです。

 研究チームはこの結果を基に、「室内の加湿が感染防止に役立つことが裏付けられた」と判断しています。

 「NEWS WEB」(2020年10月13日)のURL
 <https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201013/k10012661241000.html>

【■■】情報2「全国の男女529人に聞いた、換気に対する意識調査」

 空調専業メーカーのダイキン工業は2020年11月5日付けで、「WEBコンテンツ『上手な換気の方法〜住宅編』で『冬場の換気の方法』を公開 」と題するニュースリリースを公表しました。

 その中に、「全国の男女529人に聞いた、換気に対する意識調査」、という項目があります。

 この調査に対する回答は、大きく①〜④の4タイプに分かれています。

①「冬場に自分の家で窓開け換気をしたい」と思うか
  「思う人」75.0%。
  「思わない人」25.0%。

 寒い冬に、なぜ、75%もの人が「窓開け換気をしたい」と思うのでしょうか?
  その理由は,次の②に示されています。

②冬場に窓開け換気をしたい理由
  「コロナ対策」71.3%
  「気持ちのリフレッシュ」66.5%。


 寒い冬に「窓開け換気をしたい」のは主として「コロナ対策」、すなわち冬には「新型コロナウイルスの飛まつが、霧状に広がりやすくなる」ことを考慮した結果だったのですね。

③冬場に窓開け換気をしたくない理由
「寒くなる」78.8%
 「暖房のための電気代が高くなる」43.9%。 

 コロナに備えて窓を開けて換気をすると、寒くなるので暖房をしなければならないが、そうすると電気代が高くなるのでためらってしまう・・・。こうなると少し深刻ですね。


④冬場と夏場のエアコンの電気代について
「冬の方が高いと思う」60.3%。
 「夏の方が高いと思う」39.7%。


 11月5日付け「ニュースリリース」のURL
 <https://www.daikin.co.jp/press/2020/20201105/>

【■■】情報3「全国各地域の平均的な電気代」

 ダイキンのニュースリリースには、「冬場と夏場のエアコンの電気代について──『冬の方が高いと思う』60.3%」、という項目が正しいか否かの説明が見当たりませんでした。

 そのため、自分で調べてみると、「soraでんき」というウェブサイトに、便利な表がありました。そのタイトルは、「こちらの表でお住いの地域の平均的な電気代を確認してみましょう」。

 そうすると、北は北海道から南は九州まで、確かに冬(1月〜3月)の方が、春(4月〜6月)・夏(7月〜9月)、秋(10〜12月)より電気代が高くなっていました。

 ただし、沖縄だけは冬(1月〜3月)の電気代が最も安くなっていました。

 「soraでんき」のURL
  <http://www.sora-denki.biz/article/report001.html>

【■■】情報4「WEBコンテンツ『エアコン節電情報』に『冬の暖房編』を追加」

 空調専業メーカーの「ダイキン」は、2020年11月5日付のニュースリリースに続いて、11月12日にもニュースリリースを公表しました。そのタイトルは次の通りです。

 冬の窓開け換気で気になる「エアコンの電気代」削減をサポート
 WEBコンテンツ「エアコン節電情報」に「冬の暖房編」を追加 

 11月12日付け「ニュースリリース」のURL
 <https://www.daikin.co.jp/press/2020/20201112/>

 WEBコンテンツ「エアコン節電情報──冬の暖房編」は大きく①〜⑥の6項目で構成されています。

 ①できるだけ部屋が寒くならないように工夫しましょう。
 ②温度を上げるのではなく、エアコンの使い方を工夫することにしましょう。
 ③温度・湿度を上手に調整しましょう。
 ④エアコンの手入れを定期的に行いましょう。
 ⑤結露の原因について、正しく理解しましょう。
 ⑥冬の暖房機器の特徴を知って、正しく使い分けましょう。

 貴重なノウハウが分かりやすく説明されているので、各項目を丁寧に見ていくことにしましょう。

 ◆①できるだけ部屋が寒くならないように工夫しましょう。

 換気などで外から入ってくる冷たい空気は、「サーキュレーター」や「空気清浄機」などを利用して、足元にたまらないようにゆっくりと「かき混ぜ」ましょう。

 また昼間の太陽の熱は、積極的に部屋に取り込んで、部屋を暖かくしておきましょう。それに加えて、夜間は厚手のカーテンや断熱シートなどを活用して、室内に取り込んだ熱が外に逃げないように心がけましょう。

 さらにカーテンでもひと工夫しましょう。カーテンは窓ガラスの部分だけを覆うのではなく、上部や下部にすきまができないよう、天井から床いっぱいまでたっぷりと垂らすと、保温効果が高まります。

 また、「カーテンの色」も節電に効果があります。暖色系でまとめられた部屋は、寒色と比べて暖かく感じるといわれています。カーテンの色で体感温度を上げて、暖房の設定温度を抑えるのも、節電の冬を快適に過ごす工夫のひとつです。

 ◆②温度を上げるのではなく、エアコンの使い方を工夫することにしましょう。

 空気には、冷たい空気が下にたまり、暖かい空気が上にたまるという性質があります。こういう空気の性質を知った上で、エアコンの風向きの調整を行ったり、サーキュレーターなどを併用すると、暖房の効率を高めることができます。

 なお、「スイッチを入れたり、切ったり」することで、温度調整を行うのはやめましょう。エアコンは、寒い部屋を一気に暖めようとする時に、多くの電気を使います。すなわち「節電のつもり」が、逆に「電気のムダ使い」になる場合があるのです。

 設定温度まで暖めた後、その設定温度を維持している時は、寒い部屋を暖める場合と比べてとても少ない電気で済みます。すなわち、部屋にいる時はスイッチの入切を控え、エアコンの温度調節機能に任せるのがおすすめです。

 ◆③温度・湿度を上手に調整しましょう。

 エアコンの設定温度は消費電力に大きく関わり、設定温度を1度下げると約10%の節電になるとされています。

 そのため、環境省が推奨する暖房時の設定温度20度を目安としましょう。そして、寒く感じた場合には少し厚着をして、無理のない範囲で温度調整を行いましょう。

 なお、暖房の設定温度を20度以下と「控えめ」にしたい場合には、寒さを感じやすい「首・手首・足首」などを、タートルネックやレッグウォーマーなどで保温するのがオススメです。

 ◆④エアコンの手入れを定期的に行いましょう。

 フィルターやフィンなどは、定期的に手入れを行ってきれいに保つことで、暖房効率の低下を防ぐことが可能です。すなわち、「エアコンが余分な電気を使わずに、スムーズに運転できるように心がける」のが、節電の基本です。

 ◆⑤結露の原因について、正しく理解しましょう。

 冬の大きな悩みのひとつが「結露」です。結露をそのまま放置していると、カビなどが発生して、建物を傷めることになってしまいます。このように「結露の仕組みやその対策」、「暖房機器との関係」などを正しく理解しましょう。

 ◆⑥冬の暖房機器の特徴を知って、正しく使い分けましょう。

 「エアコン、ストーブ、床暖房」など、暖房機器には様々なタイプがあります。これらを合わせて使っている家庭も多いと思いますが、それぞれに「メリット・デメリット」があります。各暖房機器の特徴を知った上で、「住まいの状況」「生活スタイル」「目的」に合わせて使い分けることが大切です。

 WEBコンテンツ『エアコン節電情報』のURL
<https://www.daikin.co.jp/air/life/electricitysaving/>

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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