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「斜め45度」の視点

2015年1月20日

第163回パークコート渋谷大山町ザプラネの販促にまつわる「小事件」

 三井不動産レジデンシャルと大林組グループの大林新星和不動産は、「パークコート渋谷大山町ザプラネ」の第1期販売を2014年12月上旬に実施し、全戸即日登録申し込みを達成した。引き続き、2015年1月下旬に第2期販売を行う予定。

 大林新星和不動産は、大林不動産と新星和不動産が合併して、2014年10月に発足したばかりなので、幸先のいいスタートを切ったことになる。

 東京メトロ千代田線「代々木上原駅」から徒歩9分。大正から昭和初期に開発された東京都渋谷区大山町の邸宅街の北端に位置する、質感のあるタイルに包まれた高級マンションである。三段の水盤および既存樹をベースにした「水と緑の中庭」を挟んで、北東の区画に翠邸、南東に悠邸、西に清邸と3棟を配した。全131戸、平均坪単価470万円前後。全体の約8割が億ションで、最高価格は約3億6900万円に達する。 

 購入層は渋谷区とその周辺区に居住する、会社員、会社役員、経営者、医師などを中心に、「本邸として長く住みたい」と考える実需層が大半を占める。

 このような好調物件なのに、タイトルになぜ「小事件」と銘打ったのか。それは、「パークコート渋谷大山町ザプラネ」が、リクルートのインターネット「SUUMO」に掲載されているにもかかわらず、週刊マンション情報誌「SUUMO新築マンション首都圏版」に掲載されなかったためだ。

 この事実に気づいたきっかけは、筆者が採用している取材手法にある。取材したいマンションを探すとき、初めは、マンション各社のHPを調べて物件情報をさっと収集。その後に、マークした物件を、情報誌「SUUMO」で改めて確認し直すことにしている。

 過去の経験則からいうと、三井不動産レジデンシャルが「渋谷大山町」ほどの目玉物件を、情報誌「SUUMO」に掲載しないケースは存在しなかったはずである。しかし、「渋谷大山町」に関しては、まったく掲載されていなかった。これは、第1期販売直前の2014年10月上旬から12月下旬までに発行された、同誌十数冊を調べて確認した。

 少し気になって、「渋谷大山町」のモデルルームを取材した際に、三井不レジの販売担当者に「なぜ掲載しなかったのですか?」と尋ねた。けれども、帰ってきたのは、「物件ごとに最適の販促手法を採用しています」という答。要するに、話をはぐらかされてしまったことになる。

 この話には続きがある。取材を終えて、モデルルームを出るとき、「渋谷大山町」のパンフレットや図面集など資料一式をもらった。

 事務所に戻った後、資料をざっと見ていくと、A4版12ページのしゃれたカタログが目に入った。注目物件として「パークコート渋谷大山町ザプラネ」を特集した、「RESIDENTIAL REPORT別冊」である。

 企画・制作者の名前を見ると、「YAHOO!JAPAN不動産」となっていた。つまり、三井不レジは、リクルートの情報誌「SUUMO」ではなく、YAHOO!不動産の「REPORT別冊」を選択していたのである。

 これが一過性の「小事件」にとどまるのか、あるいは「次の事件」につながるのか。気をつけて見ていきたい。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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