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2021年12月21日

第390回 野村不動産が「CO2排出量を実質ゼロにする、国内初の新築分譲マンション」を建設へ

 野村不動産が2021年11月9日、10日と2日連続で、「CO2(二酸化炭素)排出量を実質ゼロにする、国内初となる新築分譲マンションを建設予定」、という趣旨の「ニュースリリース」を公表しました。

 「CO2排出量を実質ゼロにする」目的は、「地球温暖化の防止」です。

 ◆まず11月9日付の「ニュースリリース」です。そのタイトルは・・・。

 国内初---電気・ガス CO2排出量実質ゼロの分譲マンション建築決定
 プラウドシリーズ「(仮称)相模大野4丁目計画」(旧伊勢丹跡地)」
 再生可能エネルギーによる電気自動車充電設備を駐車場全区画に設置

[■■]「(仮称)相模大野4丁目計画」における環境配慮の取り組み

 ➀ 電気・ガス CO2排出量実質ゼロ、および省CO2化を図る

【専有部】
 ・集合住宅向けエネファームを含む高効率設備の採用、高断熱化等で住宅性能を高め、省CO2化を図ります。

 ・東京ガス供給エリアの分譲マンション初となる「カーボンニュートラル都市ガス」、および、実質再生可能エネルギー100%の電気料金プラン「さすてな電気」などの採用で、CO2排出量実質ゼロを実現します。

【共用部】
 ・共用部は、東京ガスからの相模原市内の卒FIT太陽光由来の環境価値等を一部含んだ、実質再生可能エネルギー100%の電気使用により、CO2排出量実質ゼロを実現します。

 ・マンションの足元に広がる地域開放の広場には、大型LEDビジョンを設置し、賑わい創出を図ります。さらに、非常時に備えた防災設備を完備し、地域の防災拠点としての機能も強化。停電時の電力供給の一部には、太陽光パネル等の再生可能エネルギーを利用することを予定しています。

 ② 再生可能エネルギーを活用した、100%区画電気自動車充電対応

 2030年の電気自動車の普及を見据え、充電インフラ整備として屋内平置き駐車場約200台全区画に充電用コンセントを設置し、充電に利用する電力には実質再生可能エネルギーの使用を予定しています。

 さらに、 急速充電器付きの来客者用駐車場や、電気自動車のカーシェアなどを予定しており、社会と顧客のニーズに寄り添った計画としています。

 ③ 建設時におけるCO2排出量を35%削減

 住宅棟をタワー形式にしたり、一部既存建物を再利用することなどにより、当初計画から施工段階でのCO2排出量を約35%削減しました。さらに、工事中の仮設電力に再生可能エネルギー等の利用を予定、更なる環境負荷軽減を目指します。

 ④「(仮称)相模大野 4丁目計画」の概要
 所在地——神奈川県相模原市南区相模大野4丁目4009番45
 敷地面積——約1万186m²
 延床面積——約8万5000 m²
 構造——鉄筋コンクリート造、鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造
 規模——地上41階・地下3階
 総戸数——687戸(予定)
 売主——野村不動産
 設計施工——三井住友建設

[■■]「カーボンニュートラル(carbon neutral)とは何か」

 これは環境問題に関する用語です。けれども、少し意味が分かりにくい言葉なので、きちんと説明することにしましょう。

 ①カーボン(carbon)は「炭素」あるいは「二酸化炭素」を意味する言葉です。ニュートラル(neutral)は「中立」を意味する言葉です。

 したがって、カーボンニュートラル(carbon neutral)は、「二酸化炭素に関しては中立」という意味になります。それを前提にして、以下の文章の意味を考えてみましょう。

 ②植物や植物由来の燃料、例えば「カーボンニュートラル都市ガス」を燃焼させると、CO2(二酸化炭素)が発生します。

 しかし植物は、成長過程でCO2を吸収しています。その植物が、長い年月をかけて、石炭になります。したがって、ライフサイクル全体(始めから終わりまで)でみると、大気中のCO2は増加していないことになります。

 それ故に、「CO2排出量の収支は実質ゼロになる」、イコール「二酸化炭素に関しては中立になる」という風に考えるのです。

 ③カーボンニュートラル都市ガスとは何か

 これは、「都市ガス」の採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する「二酸化炭素」と、当該ガスの調達元が保有する「CO2クレジット」を相殺(カーボン・オフセット)して購入する「液化天然ガス」を利用して、製造された「都市ガス」です。

 なお、「クレジット」とは、「信用、信頼」という意味です。したがって、「CO2クレジット」とは、信頼性の高い検証機関が、世界各地の環境保全プロジェクト等における「CO2削減効果」を認証したことを意味しています。

[■■] 野村不動産グループと東京大学先端科学研究技術センターが連携

 ◆次に11月10日付の「ニュースリリース」です。そのタイトルは・・・。

 野村不動産グループと東京大学先端科学研究技術センターが
 カーボンニュートラル技術拠点に関する連携を開始
 「芝浦一丁目プロジェクト」を気候変動の「緩和」と「適応」を推進する社会実装の場として活用

 これは野村不と東大先端研が、野村不が計画している「芝浦一丁目プロジェクト」を、気候変動の「緩和」と「適応」を推進するための「社会実装の場」として活用する試みです。

 ➀「芝浦一丁目プロジェクト」について

 野村不動産、野村不動産ビルディング、東日本旅客鉄道が共同で推進する「国家戦略特別区域計画の特定事業」で、浜松町ビルディング(東芝ビルディング、東京都港区芝浦 1-1-1)の建替事業。

 区域面積約4.7ha、高さ約235m、延床面積約55万m²という、オフィス・ホテル・商業施設・住宅を含む、「大規模複合開発」で、S棟とN棟から構成されています。

 ◆S棟地上43階地下3階 /高さ約235m /着工:2021年度 竣工:2024年度
 ◆N棟地上45階地下3階 /高さ約235m/着工:2027年度 竣工:2030年度

 ②「カーボンニュートラル技術」について
 気候変動に対する緩和策として、最新の省エネ・省CO2技術、「自社施設等での創電」による再生可能エネルギー、「カーボンニュートラル都市ガス」の導入等により、大規模複合開発における街区全体での CO2排出量の実質ゼロを実現させる予定です。加えて、気候変動への適応策として、これからの街づくりに欠かせない、水害等の災害にも耐えられる性能を備え、都市機能の維持に取り組んでいきます。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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