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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2014年4月15日

第136回マンションに関する不思議なランキング

 マンションのデータに関する、次の質問に答えられる人がいるだろうか。

 「2009年6月から2013年3月まで、約4年間の実績戸数を都道府県別に並べると、ベスト10が以下の順になるのは、マンションに関して何をテーマにしたランキングか?」。

 【マンション(共同住宅)の実績戸数ベスト10】

 01位 東京都─6227戸

 02位 静岡県 ─585戸

 03位 埼玉県 ─575戸

 04位 福岡県 ─537戸

 05位 神奈川県─533戸

 06位 千葉県 ─484戸

 07位 愛知県 ─241戸

 08位 大阪府 ─183戸

 09位 北海道 ─103戸

 10位 山口県 ─94戸

 

 ランキングの特徴は、首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)の自治体が順調に上位に入っているにもかかわらず、関西圏(大阪府・兵庫県・奈良県・京都府)が低調であること。大阪府はかろうじて8位に入っているが、兵庫県(91戸)、京都府(44戸)、奈良県(17戸)は10位以内に入っていない。

 回答は「長期優良住宅のうち共同住宅の認定実績」。答えられた人は、おそらく1割に満たないのではないか。

 対象を「長期優良住宅のうち戸建て住宅の認定実績」に変更すると以下になる。

 【戸建て住宅の実績戸数ベスト10】

 01位 愛知県 ─4万0063戸

 02位 神奈川県─2万3187戸

 03位 埼玉県 ─2万2551戸

 04位 東京都 ─2万0961戸

 05位 静岡県 ─1万9451戸

 06位 千葉県 ─1万9089戸

 07位 兵庫県 ─1万8287戸

 08位 大阪府 ─1万6125戸

 09位 福岡県 ─1万4946戸

 10位 茨城県 ─1万2103戸

 戸建て住宅でも首都圏が上位で関西圏は低調。兵庫県は7位、大阪府は8位に入っているが、京都府(6709戸)、奈良県(5371戸)は10位以内に入っていない。

 長期優良住宅を建設するためには建築コストがかかる。関西人の合理・節約・値切り傾向がこんな面にも現れたのだろう。

 筆者が長期優良住宅の上記ランキングに気付いたのは、最近、野村不動産とNTT都市開発が建設している、分譲マンションとしては大阪市初の長期優良住宅となる「プラウドタワー安堂寺」を取材したため。

 「なぜ大阪市で今ごろ、初の長期優良住宅なのか」と疑問に感じて国土交通省のデータを調べて、「東高西低」の実情を把握した。

 「プラウドタワー安堂寺」の販売カタログで目を惹いたのは「海に挟まれた半島から始まった大阪の歴史」。数千年前の大阪市は上町台、千里丘陵、生駒山地を除くとすべて河内湾。五世紀頃になると淀川・大和川水系から運ばれる土砂が堆積して河内湾が河内湖に変化し、さらに土砂が堆積して現在のようになった。この敷地は上町台地に位置し、標高は約20メートルあるので安心感が強い。



 「プラウドタワー安堂寺」概要

  所在地─大阪市中央区安堂寺町2丁目

  構造─鉄筋コンクリート造

  規模─地上21階・塔屋1階

  総戸数─100戸

  専有面積─36.36~82.55平方メートル

  第1期販売─4月上旬

  平均坪単価─220万円前後

  竣工予定─2015年7月

  事業主─野村不動産、NTT都市開発

  設計・施工─大林組

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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