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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2016年7月12日

第217回2020年人気マンションの値段はこうなっている

 『週刊現代』7月2日号の記事、「2020年人気マンションの値段はこうなっている──全117物件の価格を実名ですべて公開」を読みましたか。

 私の興味は「誰がこんな記事を書いたのだろう?」。実際に読んでみると、みずほ証券上級研究員の石澤卓志氏を初めとする、信頼できる不動産アナリストの分析に基づいている。そして117物件の価格予想を行ったのは、株式会社「おたに」の小谷祐一朗代表取締役で、使用したツールは不動産価格推定サービス「GEEO」だという。

 実はこの「GEEO」は2015年度グッドデザイン賞の特別賞を受賞している。日本デザイン振興会が公表した、受賞理由をまとめておこう。

 概要──GEEOは、マップ上にピンを落とすだけで、その地点の不動産の成約価格(時価)を表示します。これまで不動産の時価を調べるには、近所の不動産屋さんに聞いて回ったり、路線価図を何ページもめくったり、あるいは専門家へ鑑定評価の依頼をする必要がありました。これからはGEEOで地点を指定するだけですぐに時価がわかります。また、GEEOはオープンデータを活用し、統計的に時価を推定するため、中立的な評価が可能です。さらに、有料のPro版をご利用の場合、周辺時価の過去推移やマンション名等も取得可能なため、不動産に関連した調査やマーケティンゲの目的でもお使いただけます。

 審査委員の評価──不動産の成約価格を、独自に開発したデータサイエンスアルゴリズムによって推定するサービス。これまでのように不動産屋だけではなく一般消費者にも情報が提供され、オープンなサービスとなっている。データサイエンスのチャレンジによって利用者の求めている情報が得られるようになった。今後はこのようにアルゴリズムやAIが利用者のニーズを満たす場面が増えてくるのかもしれない。

 『週刊現代』の記事はいち早くGEEOに注目した成果だったのである。そのため石澤氏を初めとするアナリストやマンション評論家は、GEEOの価格予想が正しいことを前提に、その背景を説明する役割を担っている。

 記事から7つのキーワードを抽出した。

(1)2020年が大きな節目になる。

(2)海外投資家、富裕層の動きに注意。

(3)経済の動向を読んで、価値の高い立地に注目。

(4)人口の増減を読んで、人気の高い立地に注目。

(5)バス便より駅近、駅近より駅直結への流れがある。

(6)A供給減少に警戒せよ。B供給過剰に警戒せよ。

(7)A大型物件は好調期には勢いよく上がるが、B不調期には勢いよく下がる。

 今回対象とした117物件のうち、文京区の5物件(完成は2004年?2011年)について、GEEOは「2020年には価格がそれぞれ25%、24%、17%、3%、2%下落する」と予想。週刊現代は「文京区が全滅となっているのは衝撃的」とした。

 私も驚いたが、これはキーワードの(3)(4)(6A)を組み合わせると、理解できる。

 参考までにメジャーセブン各社が販売したマンションの「星取り表」をつくってみた。三菱地所レジデンスと東京建物が健闘している。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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