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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2020年7月21日

第356回 リクルートが「新型コロナによる住宅入手意欲の変化」を調査

 不動産ポータルサイトの「SUUMO」を運営するリクルート住まいカンパニーは、「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」と題するプレスリリースを、2020年6月30日に配信しました。これは「新型コロナ問題の発生によって、ユーザーの住宅入手意欲がどのように変化したのか」を、アンケート調査をベースにしてまとめた資料です。

 調査期間──2020年5月17日(日)〜5月21日(木)
 調査対象者──「住宅の購入」あるいは「住宅の建築」を検討している人
 集計対象者──首都圏(1都4県)に在住する20〜69歳の男女569人

 緊急事態宣言が発令されたのは4月7日で、それが首都圏で解除されたのは5月25日でした。したがって、アンケート調査が実施された期間は、首都圏に住む人々が、「もうすぐ緊急事態宣言が終わると、希望を持ち始めた頃」だったことになります。

【■■】新型コロナが「住まい探しに与えた12タイプの影響」

 質問「新型コロナ問題の拡大は、住まい探しにどのような影響を与えましたか?」

 回答
 ①「影響はない」34%
 ②「検討を休止した、いったん様子見にした」24%
 ③「モデルルーム・モデルハウス・住宅展示場・不動産店舗・実物を見に行くことを止めた」23%

 ④「住まい探しの後押しになった」16%
 ⑤「住まい探し始めのきっかけになった」15%
 ⑥「住まいにかけてもよい金額が減った」14%

 ⑦「契約の後押しになった」10%
 ⑧「検討している物件のエリア(立地・駅等)が変わった」8%
 ⑨「検討している物件の種類(一戸建て・マンション等)が変わった」8%

 ⑩「検討を中止した」7%
 ⑪「住まいにかけてもよい金額が増えた」5%
 ⑫「その他」1%


(注、複数回答を認めているため、この回答①〜⑫タイプを合計すると、165%になります)

 回答は実に12タイプに分かれています。前代未聞の出来事でしたので、「住宅の購入」あるいは「住宅の建築」を検討している人達が、大いに悩んだ結果であると思われます。 

【■■】「住まい探し慎重派─合計68%」が最多グループ

 12タイプの回答は、大きく5つのグループにまとめることができます。

◆A「マイペース派─合計34%」
  ①「影響はない」34%

  これを「マイペース派」と呼ぶことにしましょう。

 ◆B「住まい探し慎重派─合計68%」
  ②「検討を休止した、いったん様子見にした」24%
  ③「モデルルーム・モデルハウス・住宅展示場・不動産店舗・実物を見に行くことを止めた」23%
  ⑥「住まいにかけてもよい金額が減った」14%
  ⑩「検討を中止した」7%

  これを「住まい探し慎重派」と呼ぶことにしましょう。

 ◆C「きっかけ派─合計46%」
  ④「住まい探しの後押しになった」16%
  ⑤「住まい探し始めのきっかけになった」15%
  ⑦「契約の後押しになった」10%
  ⑪「住まいにかけてもよい金額が増えた」5%

  これを「きっかけ派」と呼ぶことにしましょう。

 ◆D「考え直し派─合計16%」
  ⑧「検討している物件のエリア(立地・駅等)が変わった」8%
  ⑨「検討している物件の種類(一戸建て・マンション等)が変わった」8%

  これを「考え直し派」と呼ぶことにしましょう。

 ◆E「その他派─合計1%」
  ⑫「その他」1%
  これを「その他派」と呼ぶことにしましょう。

 以上のように、①から⑫まであった12タイプの回答は、「マイペース派」「住まい探し慎重派」「きっかけ派」「考え直し派」「その他派」という、5つのグループに集約することも可能です。

 そして、「12タイプ」あるいは「5つのグループ」というように、「多様な層」をカバーできることが、リクルート住まいカンパニーの強みとされています。

【■■】コロナ拡大に伴う「住まい探しへの影響」

 住宅の種類別に比較すると、「顕著な現象」も観察されています。「新築マンション、中古マンション、注文住宅」などに分けて、コロナ拡大に伴う「住まい探しへの影響」を質問してみました。すると・・・。


 ◆新築マンション
  促進された─17%
  抑制された─48%(※)
  影響はない─35%
 ◆中古マンション
  促進された─18%
  抑制された─37%
  影響はない─44%
 ◆注文住宅
  促進された─31%
  抑制された─37%
  影響はない─42%

 新築マンションだけが、「抑制された」が48%(※)と、高い数字になっています。これについては、次のような注釈が付けられています。

 「新築マンションで抑制傾向が強くでているのは、緊急事態宣言中にモデルルームを閉める物件が多かったことも影響していると考えられる」。

【■■】コロナ拡大による「住宅に求める条件の変化」

 最後に、コロナ拡大による「住宅に求める条件の変化」です。

 1位─仕事専用スペースがほしくなった 25%
    その代表が、いわゆる「テレワーク」ルームになります。
 2位─宅配ボックス・置配ボックスを設置したくなった 24%
 3位─通風に優れた住宅に住みたくなった 23%
 4位─遮音性に優れた住宅に住みたくなった 22%
 5位─収納量を増やしたくなった 22%


 自宅で仕事をしている皆さんが、「その通り」とうなずきたくなるような項目が並んでいますね。

 本プレスリリースのURL
<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000278.000028482.html>

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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