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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2012年4月10日

第63回大震災がマンション購入予定者に及ぼした影響

 メジャーセブンが、2012年2月に、第16回「マンショントレンド調査」の結果を発表した。新築マンションの購入意向を持つ、約4500人のユーザーにアンケートした内容である。

 その中から、防災に関する項目をピックアップ。東日本大震災以前に発表された前回(2011年2月)調査と、大震災以降に行われた今回(2012年2月)調査を比較しながら、要約する。

 【マンションの防災設備で必要だと思うもの】

 1位 非常用電源・発電機 63%

 2位 非常用照明 61%

 3位 給水ポンプ(停電時) 58%

 4位 耐震ドア枠 57%

 5位 強化ガラス 57%

 6位 簡易型トイレ 50%

 7位 防災備蓄倉庫 47%

 8位 飲料水浄化装置 45%

 9位 耐震ラッチ 40%

 10位 緊急地震速報装置 37%

 「非常用電源・発電機」が1位なのは納得できる。「あの日」から数日間、電気が不足して、苦労した記憶がよみがえるような気がする。

 緊急地震速報装置が10位になったのも理解できる。震度3以下の地震を速報しても、「オオカミ少年」扱いされて、相手にしてもらえなくなっている。普通の家庭(住戸)では、震度4以上の地震でないと、速報する意味が薄いのではないか。

 【震災後における意識の変化】

  「家族で暮らすことや親族との交流の大切さ」

   71%が意識

  「マンション住民同士のコミュニティに参加交流する」

   57%が意識

  「マンション周辺の住民や地域のコミュニティに参加交流する」

   52%が意識

  「あの日」を境に、多くの人が絆の大切さを、身に染みて感じた結果が現れている。

 【マンション購入時にお金をかけてもこだわりたいポイント】

  「耐震性が高いこと(免震構造など)」

   前回9位 → 今回5位

  「災害(台風、水害など)に強いこと」

   前回17位 → 今回11位

  「災害時の対策・防災設備の配備がされている」

   前回29位 → 今回21位

 防災性に関しては、前回より向上してはいるものの、総じて、まだ危機感が足りないように感じる。

 【理想とするマンション】

  「高層マンション、タワーマンション」

   前回11位 → 今回13位

 タワーマンションは、都市としての東京を、脆弱な街にしている面もある。すなわち、個人としてだけでなく、都民としての判断も加わって、13位に後退したのではないか。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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