リアナビ

スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2014年9月16日

第151回販売担当者が知らないマンションの収納率

 私はマンションのモデルルームを取材したとき、販売担当者に必ず「収納率はどれくらいですか?」と質問することにしている。

 この質問に関して、最近は芳しくない傾向にある。超一流あるいは一流といわれるマンションデベロッパーでさえも、「正解率」は30パーセントにも満たないのである。「分かりません」というのならまだしも、「測っていません」「調べていません」という返事さえある。

 その一方、パンフレットには、堂々と「収納を確保するためトランクルームを設けました」とか、「たっぷりとした広さのウォークインクロゼットを設けました」などと明記しているケースもある。これでは本末転倒としか思えない。

 収納率は次のようにして計算する。

  「収納率」=「収納面積」÷「専有面積」。

 専有面積が80平方メートル、収納面積が8平方メートルの場合。

  「収納率」=8÷80=10パーセント。

 ここで注意したいのは「収納面積」の定義である。収納面積とは高さが180センチ以上の空間をいう。要するに、下足入れ、吊り下げ棚など高さが180センチ未満のものは、収納率の計算に入れてはならない。

 収納率は戸建て住宅では10パーセント程度、マンションでは8パーセント程度がひとつの目安とされている。

 収納面積は広い方がいいに決まっているが、限られた専有面積の中で収納面積を増やすと、今度は居室が狭くなってしまう。8パーセントという数字は、その兼ね合いから生まれた。

 取材する立場から見て、「一流のマンション」かどうかを簡単に見分ける方法がある。

 まず、マンションの間取り集を見て、各住戸の面積表に専有面積、バルコニー面積、室外機置場面積、アルコーブ面積に加えて、「収納面積」が明記されているかどうか。次に、リビング、ダイニング、居室、キッチンなどの「基準天井高」が記入されているかどうか。

 記入されていれば一流マンションの証しである。筆者の実感では、基準天井高が記入されている例は増えているが、収納面積あるいは収納率が記入されている例は、どういうわけか少数派に止まっている。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


BackNumber

コラム一覧

細野透 「斜め45度」の視点

2024年03月05日


山田純男 東京競売ウォッチ

2024年04月23日



Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.