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「斜め45度」の視点

2022年1月25日

第392回 三菱地所が「富士山の火山灰対策」を策定

三菱地所は2021年11月に、『富士山噴火による火山灰対策を策定〜大規模停電、交通インフラ麻痺を想定した大手町・丸の内・有楽町エリアの対策〜』、と題するプレスリリースを公表しました。

 ———2020年4月に中央防災会議より公表された、富士山噴火をモデルケースとした「大規模噴火時の広域降灰対策について」において、首都圏の停電や交通インフラ停止といった降灰の影響が示されています。

 今般、こうした事態に対して速やかに対応し、被害や混乱を軽減するための行動手順を策定したものです。対象エリアは、首都圏でも本社機能が多く集積する大手町・丸の内・有楽町エリア(以下、大丸有エリア)としています。

 行動手順では、「噴火」と「その後の気象庁の降灰予報」、「実際の降灰状況」などに応じた、『ビル機能の維持・避難誘導・帰宅困難者受入等に関するタイムライン』、『必要資機材や備品』について定めました。

 三菱地所グループでは、大規模自然災害における被害や混乱の低減に取り組み、安心安全で魅力あふれるまちづくりを推進していきます———。

 大きな地震が発生すると、建物が被害を受けたり、大勢の人が帰宅困難者担ったりします。富士山が噴火すると火山灰によって、『首都圏で停電や交通インフラ停止などの被害が心配される』ので、「その対策を講じておきます」という趣旨ですね。

 想定する被害状況

 富士山噴火時に西南西の風が吹き、大丸有エリアに1時間で5ミリのペースで灰が積もり、最大で降灰堆積が10センチになる。

 鉄道、道路、物流、電力、上水道、下水道、通信は、降灰開始数時間後~2週間程度で機能停止。

 例「鉄道」—— 微量の降灰で地上路線は運行停止、
 例「電力」—— 降雨時3ミリ以上の降灰で送電線のショートによる停電が発生。

 上記想定については、「中央防災会議・防災対策実行会議・大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ」の公表資料を参考にしております。

 「大規模噴火時の広域降灰対策について―首都圏における降灰の影響と対策―~富士山噴火をモデルケースに~(報告)」(2020年4月7日公表)

 <http://www.bousai.go.jp/kazan/kouikikouhaiworking/index.html>

 対象物件

 当社が大丸有エリアに所有する約 20 棟(丸の内ビル・新丸の内ビル等)

 行動手順の概要

 富士山噴火後、気象庁から発表される降灰予報で、大丸有エリアに多量の降灰が予測される場合、降灰・電気供給・鉄道運行等の状況に応じて、予め定めたタイムラインに基づく降灰対応を実施します。

 オフィス就業者・店舗従業員・来館者等に対しては、降灰により鉄道をはじめとする交通網が麻痺する前に、早期に帰宅行動が取れるようにお知らせの発信や館内アナウンス等を行って参ります。

 それでも帰宅困難者が生じる場合は、建物の安全性(=帰宅困難者の安全性)が確保される範囲で、受入対応して参ります。

 タイムライン(行動計画)の概要

 「レベル1」噴火はしたがまだ降灰していない予報段階
    ⇒早期帰宅を推奨するお知らせ等

 「レベル2」降灰開始した段階
    ⇒ビル設備の降灰対策・停電対策準備

 「レベル3」積灰中に停電となり非常用発電機が稼働した段階
    ⇒空調機フィルター等のメンテナンスを継続

 「レベル4」非常用発電機の燃料が僅少となった段階
    ⇒ビルスタッフ以外は避難

 「レベル5」非常用発電機が燃料切れ・故障により停止した段階
    ⇒全員避難

 ハード対応および備品確保の概要

 降灰による空調機のフィルター目詰まり対策として、「予備フィルターの確保」、「屋上の排水管閉塞防 止のための施策」、断水に備えて、「上水・雑用水の水槽貯水量を最大限増加させる」などの対応を実施します。

 また、降灰対策用に必要となる備品を整理し、既存の地震対策用備品に加えることで、 災害対応の領域を広げていきます。現時点で予定している備品は、「灰清掃用の備品(防塵マスク、防護メガネ等)」です。

 Sustainable Development Goals 2030

 三菱地所グループは、サステナブルな社会(「人間・社会・地球環境の持続可能な発展」)の実現に向けて、「Sustainable Development Goals 2030」を策定。

 重要テーマの一つとして「Resilience(しなやかな強さ)」を掲げ、「安全安心に配慮し災害に対応する強靭でしなやかなまち づくり」を進めています。今後も、より一層社外との連携・協力を深め、災害に強いまちづくりを推進してまいります。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャ─ナリスト。建築専門誌『日経ア─キテクチュア』編集長などを経て、2006年からフリ─ランスで活動。

東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。

著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『ありえない家』(日本経済新聞社)、『耐震偽装』(日本経済新聞社)、 『風水の真実』(日本経済新聞出版社)、『東京スカイツリーと東京タワー』(建築資料研究社)、 『巨大地震権威16人の警告』(共著、文春新書)、『謎深き庭 龍安寺石庭』(淡交社)など。


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