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スペシャリストの眼

「斜め45度」の視点

2012年12月25日

第89回会社名とマンション名がだんだん長くなる

 ここ数年、マンションデベロッパーの会社名と分譲マンション名が、長くなる傾向にある。

 まず、会社名が長くなった。

 (1) 三井不動産→三井不動産レジデンシャル

 (2) 三菱地所→三菱地所レジデンス

 (3) 旭化成ホームズ→旭化成不動産レジデンス

 (4) 興和不動産、新日鉄都市開発→新日鉄興和不動産

 (5) 大成サービス、有楽土地→大成有楽不動産

 会社名の長くなり方には、大きく3つのタイプがある。1番目は、大手不動産会社または住宅メーカーからマンション部門が独立して、母体の社名の末尾に、レジデンスまたはレジデンシャル等を付記した場合。上記の(1)~(3)がこれに該当する。

 2番目は、2つの会社が合併する際に、会社名を足し合わせた場合で、上記の(4)、(5)がこれに該当する。

 3番目は、会社をコーポレーション、ディベロップメントなど、カタカナで表記した場合である。フージャースコーポレーション、オープンハウス・ディベロップメントなどが該当する。

 一方、分譲マンション名の長くなり方には、大きくつの3つのパターンがある。1番目はブランド名が長い場合で、8文字のブランド名にはパークマンション(三井不動産レジデンシャル)、9文字のブランド名にはクレストレジデンス(ゴールドクレスト)やレーベンリヴァーレ(タカラレーベン)、10文字以上のブランド名にはザ・パークハウスアーバンス(三菱地所レジデンス)などがある。

 2番目は、地名が長い場合。その応用編として、関内→横浜・関内、護国寺→文京・護国寺など、地名の前にブランド地名を冠して長くする例もある。

 3番目は、ブランド名と地名の後に、色々な形容詞を付ける場合。プラウドタワー東雲キャナルコート(野村不動産)、シティテラスおおたかの森ステーションコート(住友不動産)、ライオンズ武蔵境マスターズゲート(大京)、Brillia 大井町 LA VIE EN TOWER(東京建物)などがある。

 筆者は日経産業新聞・新製品欄に、月に1回、「目利きが斬る」というマンション評価のコラムを寄稿している。

 同コラムで、今年困ったのは、三井不動産レジデンシャルと三井都市開発が分譲した「パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワー」を執筆したとき。

 タイトルには、分譲主とマンション名を入れる原則があるが、一方では字数制限がある。よって、最初は次のようにした。

 

 (1) 三井不レジ、三井都市開発「パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワー」

 これが字数制限に違反したため、次のように改めた。

 (2) 三井不レジなど「パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワー」

 下線を引いた部分は文字を小さくするように依頼した。しかし、文字を小さくすることはできない、とのこと。よって、次のように改めようと考えた。

 (3)三井不レジ「パークシティ武蔵小杉 最新棟」

 しかし、最新棟は固有名詞ではないので、これも却下。最終的には次の形で掲載された。

 (4)三井不レジ「パークシティ武蔵小杉」

 厳密にいえば、これは誤りである。同地にはすでに、「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」や「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」などが存在するので、区別がつかないためである。

 長い会社名と、長い分譲マンション名を目にする度に、どのように略記すべきかで頭を悩ませている。

 「斜め45度の視点」も、今年はこれでお仕舞い。どうぞ良いお年をお迎えください。

細野 透(ほその・とおる)

建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。  東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。日本建築学会・編集委員会顧問。 ブログ『建築雑誌オールレビュー』を主宰。日経産業新聞『目利きが斬る・住宅欄』に寄稿。  著書に、『建築批評講座』(共著、日経BP社)、『建築家という生き方』(共著、日経BP社)、 『ありえない家』(日本経済新聞社)、『建築産業再生のためのマネジメント講座』(共著、早稲田大学出版部) 、 『耐震偽装』(日本経済新聞社)、『風水の真実』(日本経済新聞出版社)ほかがある。


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